研究領域 | 脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 |
研究課題/領域番号 |
23H04240
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
橋本谷 祐輝 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (50401906)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 乳頭体上核 / 歯状回 / 顆粒細胞 / 新生顆粒細胞 / シナプス可塑性 |
研究実績の概要 |
視床下部に位置する乳頭体上核は、海馬の歯状回に投射することが知られている。最近我々は乳頭体上核と歯状回の出力ニューロンである顆粒細胞で形成されるシナプスにおいてグルタミン酸とGABAが共放出されることを明らかにした。本研究計画では、成熟した大人の脳でも新しくニューロンが誕生する歯状回の新生ニューロンに焦点を当て、乳頭体上核―新生ニューロン間シナプスの発達に伴う機能分化を調べ、さらに臨界期を伴ったシナプス可塑性が引き起こされるか明らかにする。 令和5年度は新生ニューロンにおけるシナプス可塑性を調べた。方法は新生顆粒細胞からの記録を行うために、新生顆粒細胞がGFPで標識されたGAD67-GFPトランスジェニックマウスを用いた。このマウスとVGluT2- Creマウスを掛け合わせたマウスの乳頭体上核でアデノ随伴ウィルス(AAV)を使ってチャネルロドプシン-2を発現させた。AAV注射後3週間経過したマウスの急性海馬スライス標本を作製し、顆粒細胞からホールセルパッチクランプ記録を行った。LEDを使った青色光照射によってシナプス電流を記録した。 これまでの研究で乳頭体上核投射は新生ニューロンではGABA作動性のシナプス入力はあるが、グルタミン酸作動性のシナプス応答が記録されないことがわかっていた。そこでグルタミン酸作動性のシナプス応答が記録されない理由として、シナプス後部の受容体の不在が考えられた。我々は以前の研究で、このシナプスにおいて脱分極性の長期増強が受容体の数が増えることで誘導されることを明らかにした。すなわちこの長期増強誘導刺激を与えることによって、受容体が充填され、グルタミン酸作動性のシナプス応答が出現することを期待した。その結果、長期増強の誘導刺激を与えても変化しないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新生ニューロンにおける乳頭体上核からの入力の発達における機能解析を行なった。これまでのところ、発達期のこのシナプスにおいてGABA作動性の入力はあるがグルタミン酸作動性のシナプス応答は記録されないことがわかった。さらにシナプス可塑性を誘導するような刺激を与えてもグルタミン酸作動性のシナプス応答が新規に生じることがないと判明した。現在のところ計画に沿って、新生ニューロンの機能解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
シナプス可塑性を誘導するような刺激を与えてもグルタミン酸作動性のシナプス応答が新規に生じることがないと判明したことから、次にシナプス前終末においてグルタミン酸が存在し、放出されるのかどうかを調べる。さらにこれまではAMPA受容体の応答のみを調べていたが、NMDA受容体の有無に関しても調べる予定である。 また正常に機能しているGABA応答に関して、この発達時期特異的にシナプス可塑性が生じるかどうか検討し、その可塑性がその後に起こることが予想されるグルタミン酸によるシナプス伝達機構の発達にどう関与するのか調べる。
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