公募研究
臨界期は“神経回路の再編成と可塑性が亢進する限られた時期”と定義され、発達期における神経回路の再編成やシナプス成熟が重要な役割を果たす。発達期の興奮性シナプスは、NMDA受容体のみを有する未成熟なシナプスから、神経活動依存的にAMPA受容体を含むシナプスへと成熟する。最近、AMPA受容体をシナプス後部で捕捉する足場蛋白質PSD-95が、眼優位性可塑性における臨界期終了に必要であることが報告された。本研究では、PSD-95の制御因子として見出した(1)パルミトイル化脂質修飾酵素と、(2)リガンド-受容体 LGI1-ADAM22を起点として、臨界期シナプスの成熟機構を明らかにする。2023年度は、脱パルミトイル化耐性PSD-95変異体の解析を進め、動的なパルミトイル化サイクルの生理的意義について、培養神経細胞レベルの解析を中心に進めた。また、PSD-95の脱パルミトイル化酵素ABHD17の作用機序と生理機能についても解析を進め、神経発達に関与する新たな基質を複数同定した。一方、私共は焦点てんかんと神経発達症を示す患者において、ADAM22の新規バリアント(ADAM22c.2714C>T; S905F)を見出した。そしてADAM22 S905とPSD-95を含むMAGUKファミリー(PSD-95, PSD-93, SAP102)との結合が野生型ADAM22に比べて約20%程度に低下していることを見出した。つまり、ADAM22とPSD-95の結合はヒトの脳神経発達においても重要な役割を果たしていることが明らかになった(Noskova L, Fukata Yら, Brain Commun 2023)。
2: おおむね順調に進展している
(1) 予定どおり脱パルミトイル化耐性PSD-95変異体の解析を進めた。また、PSD-95脱パルミトイル化酵素の新規基質を複数同定した。(2) 神経発達症の患者から、PSD-95との結合能が低下したADAM22バリアントを同定した。
(1) PSD-95パルミトイル化サイクルによるシナプス成熟と臨界期メカニズムの解明引き続きPSD-95のパルミトイル化サイクルを欠失した神経細胞を用いて、PSD-95パルミトイル化サイクルのシナプス機能成熟における役割を明らかにする。(2) LGI1-ADAM22-PSD-95システムによるシナプス成熟と臨界期メカニズムの解明PSD-95との結合が完全に破綻したADAM22変異マウス(ADAM22ΔC5)における脳神経発達を、行動学テストにより明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Cell Reports
巻: 43 ページ: 113634~113634
10.1016/j.celrep.2023.113634
Journal of Neuroscience
巻: - ページ: in press
Brain Communications
巻: 5 ページ: fcad295
10.1093/braincomms/fcad295
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/neuropharmacology/fukata/
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/Cel_240109.pdf