研究実績の概要 |
核膜孔複合体(NPC)は、核膜を貫き、DNA情報を伝達する核膜孔を形成する30種類のタンパク質から成り立ちます。NPCは約30種類のヌクレオポリン(NUPs)で構成され、その中にはフェニルアラニンーグリシン(FG)リピート配列を持つ特定のNUPs(FG-NUPs)が含まれます。これらのFGリピート配列は固定された構造を持たずFGリピートを介した分子間相互作用が相分離を駆動し、核膜孔内部に液滴を形成します。核膜孔の周辺(核膜孔テリトリー)では、NPCと核膜を支えるラミンタンパク質が協調して、遺伝子の選択的なサイレンシングや活性化が調節されます。核膜孔テリトリーに特有のクロマチン構造や機能が明らかにされつつありますが、NPCやラミンとの相互作用によるDNA自体の物性や構造変化ダイナミクスについてはまだ解明されていません。このため、本研究では、核膜テリトリーにおけるタンパク質ーDNA相互作用とDNAナノ動態を解析するための研究ツールを開発し、ゲノムモダリティの階層的変化をナノスケールで理解することを目指しています。今年度は、NPC-DNA相互作用が実際に起こる核膜孔テリトリーの一部であるNUP153の天然変性領域による相分離を介した相互作用タンパク質を同定し、そのプロファイリングを進めています。さらに、ラミンが作用するゲノム領域についてChIP解析を行い、NUP153が作用するゲノム領域との比較を行っています。また、高速原間力顕微鏡を用いてNUP153 FG-DNAコンフォメーションの変化や弾性率を測定するための条件検討も行っています。2023年に我々の研究成果については、Cells, JPCL, Nano Letters誌に発表した。
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