研究実績の概要 |
本研究ではポリマーとしてのゲノムDNAの構造物性が、個体発生に伴ってどのように変化するかを明らかにすることを目的とする。ゲノムDNAは間期核内で動いており、この運動性はゲノムDNAの構造物性を反映していると考えられる。本研究では線虫C. elegansを実験動物として用いる。研究開始前の段階で、研究代表者は初期胚のクロマチンの運動を可視化・定量化してきた。本研究では、後期胚、L1, L2, L3, L4幼虫、成虫といったさまざまな発生ステージでクロマチンの運動を可視化・定量化し分析することを目的としている。2023年度において、大腸菌LacIタンパク質に蛍光タンパク質GFPを融合させたタンパク質を線虫の全ステージ・全細胞で発現させる株の構築を行なった。この株を、LacIタンパク質が結合する大腸菌lacO遺伝子オペレータ配列が線虫の染色体に組み込まれた株と掛け合わせることにより、線虫の全ステージ・全細胞でクロマチンの運動を可視化することができるようになった。この実験材料を使い、2023年度においてL1、L2、L3、L4幼虫、成虫におけるクロマチンの運動を可視化し、研究代表者らが確立した「核の動きを差し引いてクロマチンの運動を定量化する方法」を適用してクロマチンの運動の定量化を開始した。その結果、発生が進んだ幼虫では、初期胚の方程式には従わないことを示唆する予備的結果を得た。今後は、さらなる測定と詳細な解析を進め、初期胚におけるクロマチンの動きとの違いや、発生過程における特徴を定量的に明らかにする。
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