研究領域 | DNAの物性から理解するゲノムモダリティ |
研究課題/領域番号 |
23H04297
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新海 創也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (60547058)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Hi-C / 高分子モデリング / 高分子粘弾性 / SMC複合体 |
研究実績の概要 |
Hi-Cデータに基づいた高分子モデルを構築するにあたり、独自に開発したPHi-C法という解析ソフトウェアを用いることで、高分子モデル内の相互作用ポテンシャルを決定することができる。このモデル化では、すべての高分子セグメント要素に対する運動方程式が記述される。しかしながら、生細胞内での特定遺伝子座や単一ヌクレオソームの動態を観測する場合、観測されるのはクロマチン繊維内の蛍光ラベル化された一部分だけである。観測されない部分は、クロマチン繊維として存在しているものの、無視されてしまう。したがって、クロマチン繊維内の蛍光輝点の動きを物理的に記述するには、観測されない部分の寄与を除外した効果が導入されることになる。このような考えに基づいて、PHi-C法による高分子モデル内の1つのセグメント要素の運動方程式がどのように与えられるか厳密な導出を試みた。その結果、新しいタイプの一般化Langevein方程式が導出され、無視されるセグメント要素が実効的にノイズとなり、一方で、その抵抗応答としてのメモリー関数とバランスをとっていることが明らかになった。それゆえ、単一高分子自身における粘弾的性質の起源を明らかにすることができた。 Hi-Cデータに基づいた高分子モデルの時空間スケールの決定することで、現実の時空間スケールに整合した高分子モデルを構築することができる。公募班の落合教授のグループと連携し、seq-DNA-FISH法による特定遺伝子座周辺の3次元ゲノム構造データと、特定遺伝子座の生細胞内での動態データを組み合わせることを試みた。その結果、転写状態に応じたNanogおよびSox2遺伝子座周辺のクロマチン物理モデルの構築に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画と比べ、より物理的に基礎的な部分が進展した。そのため、より定量的にクロマチンの粘弾性を明らかにすることができている。論文としての投稿準備が着実に進んでいる。 計画以上に、Hi-Cデータに基づいた高分子モデルの時空間スケールの決定を進めることができた。 Hi-Cデータに基づいてループ形成に関わるクロマチン粘弾性の解析においても、ループ形成領域に結合するコヒーシンとの対応で解析を進めており、予備的な結果が出始めてきている。
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今後の研究の推進方策 |
クロマチン動態のデータ解析のためには、クロマチン繊維の周囲環境の粘弾性も考慮する必要があり、その方向に理論とデータ解析手法を展開していく必要がある。 残りの計画も予定通りの計画に沿って推進する。
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