研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
23H04300
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 勝彦 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (90513622)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | force balance / cortical flow / 力学モデル / 細胞移動 / 細胞集団移動 / 細胞の回転運動 |
研究実績の概要 |
(1)細胞膜にかかる主な力(アクトミオシンからくる収縮力、細胞の体積を保存する細胞質の静水圧、外部基質との摩擦力・接着力)を力学モデルで表現して、細胞膜のすべての点で力のバランスが保たれている状態でも細胞が一方向に移動できることを示した。細胞は2次元平面上の多角形で表されているが、連続的な極限を満たす設定を導入しており、細胞膜が2次元平面上の曲線で表されている状況となっている(以下「膜モデル」と呼ぶ)。細胞が細胞膜での力のバランスを保ちながら移動できる仕組みは、細胞極性からくる細胞膜上での場所ごとに異なる収縮力の違いから収縮力の弱い領域から強い領域へのcortical flowが生じ、cell cortexは外部基質との摩擦力を持つため、cortical flowは細胞がcortical flowと逆の方に動く駆動力を生むというものである。従来、仮説などで唱えられてきていたシナリオを具体的に示したものとなっている。 (2)膜モデルは場所依存的な収縮力を駆動力とした細胞移動は一細胞の時のみならず細胞同士が接着してクラスターを形成している場合にも可能であることを示した。クラスター内の細胞は個々が細胞極性を持っており、その極性の方向に従って、細胞境界の収縮力をコントロールするという設定のみですべての細胞膜上での力のバランスが保たれたまま細胞クラスターは一方向に動くことが示された。これにより多細胞生物の形づくりで頻繁に観測されまたそのメカニズムが未解決である細胞の集団移動の仕組みの一つのもっともらしい仕組みが提案された。 (3)膜モデルによって、クラスター内の細胞の極性の方向をクラスターの中心に対してある一定の方向に傾いている場合には、細胞クラスターは細胞膜上での力の釣り合いを保ちながら回転運動をすることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
職場の移動があったため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)上皮細胞シートから細胞が離脱する現象(extrusion)も細胞膜にかかる力がのバランスが保ったまま行われるかを調べるために、現在の膜モデルを細胞の接着・脱着を表現しうるものに拡張する。ハエのborder cell migrationなどで見られる複数の細胞のextrusionのメカニズムを調べる。 (2)細胞の極性は細胞の収縮力の場所依存性を与えるだけでなく、接着力の強さや細胞膜の固さなどの他の要素にも場所依存性を与える。細胞膜の接着力の強さ、堅さの場所依存性が細胞運動にどのような変化を与えるかを調べる。 (3)細胞の極性は細胞間のどのような相互作用によって決まるかは未だ解き明かされていない。細胞極性が細胞間の相互作用によってどのように決まるかを実験データから推測し検証することを行うために、膜モデルに様々な極性の動力学に関する仮説を適用し、細胞の運動と実験の結果とを比較する。これにより、実測することが難しい細胞極性の決定のもっともらしいルールを発見する。 (4)実際の細胞では細胞膜と細胞骨格(cell cortex)は独立な運動をするという事が近年のより精度の高い観測によって明らかになってきている。このより正確な状況を記述し、またその動力学の仕組みを理解するために、現在の膜モデルを2層のモデルに拡張する。
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備考 |
Webページは現在作成中。
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