我々の研究室では、外膜:リン脂質、内膜:両親媒性タンパク質から形成される非対称膜ベシクルの形成に成功している。βバレル構造を形成するOmpGをこの非対称膜ベシクル膜に再構成し、OmpGを介した物質輸送にも成功している。また、この非対称膜ベシクルは、リポソームに比べ堅牢である利点をもっている。そこで、この非対称膜ベシクルを用いて、膜張力の変化に応じて、活性化する人工細胞モデルの構築をおこなった。膜張力の変化を感受できる機械刺激受容チャネルのMscLを利用した。αヘリックス構造のMscLをリン脂質-両親媒性タンパク質非対称膜へ再構成に成功した。そして、膜張力を変化させることでMscLを介した物質輸送に成功した。通常、MscLの活性化には、膜張力変化とアニオン性のリン脂質の存在が必要不可欠である。今回の非対称膜ベシクルには、アニオン性のリン脂質は含まれていなかった。今回使用した両親媒性タンパク質のオレオシンの末端部分には、負電荷のアミノ酸が存在している。したがって、アニオン性のリン脂質の代わりに、負電荷のアミノ酸とMscLが相互作用して、MscLを活性化したと考えられる。非対称膜上においても、MscLによって10 kDaまでの物質透過に成功している。この機構を利用して、sfcherryを大断片と10kDa以下の小断片に分離する。そして、大断片を非対称膜ベシクル内に入れ、小断片はベシクル外液に加えた。そして、膜張力を変化させ、小断片MscLを介してベシクル内へ輸送した。その結果、非対称膜ベシクル内でsfcherryの蛍光が観察された。これらの結果は、ACS Applied Materials & Interfacesに掲載された。
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