研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
23H04406
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮廻 裕樹 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (40881206)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アクティブネマティクス / 分子計算 / 細胞骨格 / 分子ロボット / 制御工学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,リポソームや微小液滴で構成される分子ロボット内外の化学的・機械的情報から分子ロボット内の欠陥の運動方向を決定し,所望の分子ロボットの運動を実現する制御機構の理論モデルの構築とその実現可能性の検証である.本年度は,分子ロボットの構造の変形を効率よく制御するために,どのような外部・内部境界を動的に生成する必要があるかを解析・設計するための数理モデルの構築を行った.分子ロボットの変形を誘導する一つのアプローチとして,ロボット内に液晶などの配向秩序性を示す分子を封入し,配向性の相転移を制御することで配向方向への変形を誘導する方略が多く取られる.液晶理論の分野では,このような変形構造はタクトイド構造とよばれているが,数学的には2つの円弧が組み合わさった多角形としてモデル化することができ,レンズ領域とよばれている.本研究では,単位円板からレンズ領域への等角写像が複素関数によって陽に記述できることを利用し,タクトイド構造内のトポロジカル欠陥まわりの配向場を陽に記述する公式を導出した.そして,導出した陽公式をもとに配向場に由来する弾性エネルギーを計算することで,トポロジカル欠陥の位置とタクトイド構造のアスペクト比との関係を評価した.その結果,レンズ領域のアスペクト比が大きくなるにつれて安定な欠陥の位置が移動し,ある閾値以上のアスペクト比では境界上に欠陥が存在するときが安定になることが明らかになった.この結果は,トポロジカル欠陥を所望の方向へ運動させ,変形を誘導するために必要な形状の設計指針になると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り,境界が連続的に変化したときに,配向場や欠陥位置がどのように変化するかを予測する計算モデルを構築することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は分子ロボットがネットワーク構造をつくる場合における分子ロボットの運動方向を制御するモデルを構築する.具体的には,外部入力分子の流入口の数によって欠陥生成の有無や生成位置を制御し,ロボットの運動方向の誘導を実現する理論基盤を構築する.また,理論基盤を実験的に検証するための化学反応系や流体デバイスの設計も行い,構築した理論の妥当性を検証する実験系の構築も併せて目指す.
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