研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
23H04429
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
曽和 義幸 法政大学, 生命科学部, 教授 (10519440)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | べん毛 / リポソーム |
研究実績の概要 |
ミニマル人工脳のためのリポソームの人為的変形に必要になる分子アクチュエーションシステムとして細菌べん毛繊維を用いることを目指す.べん毛繊維は,1種類のフラジェリンが筒状の超分子複合体を形成するシンプルな系である.わずかに構造の異なる分子を集合させて形態の大きく異なる複数の超らせん構造をとることができ,マイクロスケールの可逆的な形態変化,および情報の分岐を構造として表現できることが特徴である. 2023年度は,べん毛再構成・蛍光標識およびリポソーム内でのべん毛多型変換を目指した.これまで,べん毛繊維は菌体から精製した標本,すなわち10マイクロメートル程度を中心とした長さ分布をもつべん毛繊維を用いてきた.より大きなリポソームの変形を誘導するため,菌体から精製したものよりも長い繊維を用いる必要があった.そこで,べん毛の精製・再構成をおこなうことで平均的に長いべん毛繊維を得た.得られた標本についてpHを変化させて多型変換を誘導することを試みたが,1本の繊維内で複数の形状が混在することがまれに観察されたため,より安定に多型変換を引き起こす純度の高い再構成べん毛を得る条件の検討を進めている.また,リポソーム内に封入したべん毛繊維をpH変化によって多型変換を引き起こすためリポソーム外液のpHを変化させた結果,内液へとプロトンが拡散してべん毛の多型変換は誘導できた.一方,リポソームの膜の張力が高い条件で実験をおこなっていたため,べん毛変形によるリポソーム形状の変形までには至っておらず,膜の浸透圧を調整する条件検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であるリポソームの変形を誘導するためには条件検討が必要であるのだが,外部からの刺激によってリポソーム内でのべん毛多型変換の誘導に成功したため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の方針を引き続き推進し,リポソームに内包したべん毛多型変換の条件検討をおこなう.これと並行して,べん毛の集合によるリポソーム変形の方針も進めることで,本研究課題の目標であるリポソームの人為的変形を目指す.
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