研究実績の概要 |
本年度報告する主な研究成果は以下のものである。 ① 論文[C.,J.Differ.Equ.,2024]では、パラメータが付いた形状汎関数の臨界形状の局所的な挙動を明らかにする手法を提案した。先行研究では、二相Serrin型優決定問題の摂動解の局所存在とねじり剛性汎関数に対する複合媒質の退化性の関係が指摘されていたが、この論文では一般論の構築に成功した。この結果は、形状汎関数のMorse理論への第一歩であるといえる。 ② 論文[C.,J.Geom.Anal.,2024]では、ある連続回転群に対して不変な優決定問題の解の研究を行った。具体的には、形状汎関数の臨界形状として定式化される優決定問題の非退化な解は優決定問題と同じ対称性を共有ことを示した。 ③ 論文[C.,Interfaces Free Boundaries,掲載決定(2024)]では、二相複合媒質と三相以上の多相複合媒質との違いを明らかにした。一相、二相の場合と異なり、k相(k≧3)の場合には、境界に課されたk個の優決定条件を満たす球対称でないk相複合媒質が存在することが示された。言い換えれば、三相以上の多相複合媒質における逆問題(境界の観測データから内部の構造を復元するという問題)は極めてill-posedであることが示唆される。 ④ 論文[C.,Math.Mag.,掲載決定(2024)]では、形状最適化問題の研究に不可欠な「形状微分」を用いて、ピタゴラスの定理や正弦定理、余弦定理の別証明が与えられた。 また、以上の結果に加えて、船野敬氏、坂口茂氏(東北大学)、A.Henrot 氏、A. Lemenant 氏(ロレーヌ大学)、I. Lucardesi 氏(ピサ大学)との共同研究に基づく、Laplace作用素のNeumann固有値の「包含関係に対する非単調性」に関する研究成果は現在学術雑誌に投稿中である。
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