研究領域 | 「学習物理学」の創成-機械学習と物理学の融合新領域による基礎物理学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04491
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉留 崇 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90456830)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水和自由エネルギー / 深層学習 / タンパク質 |
研究実績の概要 |
タンパク質の水和自由エネルギーを高速に計算する手法を開発することを目的として、研究を遂行した。開発には、タンパク質周りの水和分布を高速に計算する独自の深層学習モデル「gr Predictor」、並びに以前開発した水和自由エネルギー計算手法(ER-MA法)を用いた。2つの手法をハイブリッドした結果、これまでの水和自由エネルギー計算手法では数時間の計算が必要だったのに対し、新たに開発した手法では数分程度で水和自由エネルギーの計算が可能となった。また、開発した手法の水和自由エネルギー計算値は、既存の手法の計算値からわずか5%しかずれておらず、開発した手法は、速く正確に水和自由エネルギーを計算できることが分かった。さらに、水和エントロピーは形態計測学アプローチを用いて高速かつ正確に計算できることがすでに京都大学の木下名誉教授等によって示されており、水和自由エネルギーと水和エントロピーがあれば水和エネルギーは計算できるので、今回の成果によって、水和熱力学量を高速に計算する手法を開発することに成功した。 また、タンパク質の水和自由エネルギー分布を計算する手法であるグリッド不均一溶液理論(GIST)と深層学習を融合する研究についても進めた。Deep GISTと名付けた深層学習モデルのハイパーパラメータサーチを行い、最適なハイパーパラメータを決定した。また、水和エントロピー分布と水和エネルギー分布についてもモデルを構築し、ハイパーパラメータサーチを行った。以上の結果を元に、論文執筆に取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水和自由エネルギーを高速に計算する手法の開発に成功し、本研究課題完了の目処が立ったため。
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今後の研究の推進方策 |
開発した水和自由エネルギー計算法の精度向上を、gr Predictorをタンパク質-水分子間の相互作用エネルギーを出力する形に変更することによって試みる。また、デコイ判別(数百から数千の偽物構造のなかから天然構造を射当てる問題)など、膨大な量のタンパク質構造を扱う問題に手法を適用し、手法の有用性を議論する。以上の結果を論文としてまとめる。さらに、Deep GISTの論文の執筆を続ける。
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