研究領域 | 「学習物理学」の創成-機械学習と物理学の融合新領域による基礎物理学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04495
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 英如 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00776875)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ガラス / 深層学習 / Grad-CAM / アモルファス構造 / 局在振動 / 動的不均一性 |
研究実績の概要 |
本研究は深層学習を活用してガラスのアモルファス構造を解析し、局在振動の形成機構を解明することを目的とする。深層学習の手法として、「Grad-CAM」を採用する。この手法は、アモルファス構造における液体的な領域と固体的な領域の空間分布をGrad-CAM scoresによって定量化する。Grad-CAMを用いることによって、アモルファス構造とガラス物性の関係性を議論できる。本研究は、Grad-CAMを活用してアモルファス構造と局在振動の関係性を明らかにする。 局在振動を調べる前に、本年度は過冷却液体の動的不均一性を調べた。アモルファス構造と動的不均一性の関係性はこれまでに活発に議論されてきた。そこで、Grad-CAMが抽出する構造秩序が動的不均一性を捉えることができるかを精査することによって、Grad-CAMがそもそも合理的な構造秩序を取り出しているかを検証できる。そして、この合理性をもって、局在振動の研究へと移行する計画である。本年度は以下の結果を得た。 (1)ガラスの標準的なモデルを用いて、分子動力学シミュレーションを行い、温度を変えたときの動的不均一性を定量的に調べた。その結果、従来得られてきたように、温度を低くすると動的不均一性が成長する振る舞いを再現できた。 (2)各温度におけるアモルファス構造をGrad-CAMによって解析し、構造秩序を定量的に調べた。その結果、温度を低くすると液体的な領域が縮小し、固体的な領域が拡大するという直感的に合理的な結果を得ることができた。 (3)動的不均一性とGrad-CAMによる構造秩序を比較検証し、両者の空間相関を調べた。その結果、液体的な領域でダイナミクスが大きくなるという、従来得られてきた合理的な結果を得ることができた。以上の結果から、Grad-CAMがアモルファス構造における秩序を合理的に取り出していることを結論付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はアモルファス構造と局在振動の関係性を明らかにすることである。そのために深層学習の手法であるGrad-CAMを用いてアモルファス構造の解析を行う。本年度はGrad-CAMの手法の検証を行った。そもそもGrad-CAMが合理的な構造解析を行なっているか否かを検証した。そのために、これまでに活発に研究されてきた過冷却液体の動的不均一性を取り上げた。その結果、Grad-CAM scoresは問題なく動的不均一性を捉えることができており、合理的な構造解析を行なっていることを結論付けることができた。この結論をもって、次年度から本研究の主題である局在振動へと移行することができ、研究は順調にいっていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでおり、計画にしたがって今後は局在振動とアモルファス構造の関係性を研究していく。以下に示す具体的な計画に沿って研究を遂行していく。 (1)ガラスの標準的なモデルを用いて、分子動力学シミュレーションを行い、ガラス配置をつくる。 (2)(1)で得たガラス配置に対して、振動解析とGrad-CAM 解析を行う。振動解析からガラスの局在振動のデータを得る。一方でGrad-CAM解析からアモルファス構造の秩序をGrad-CAM scoresのデータとして得る。 (3)(2)で得た局在振動と構造秩序のデータの両者を比較検討する。どの構造領域で振動の局在化が発生しているかを明らかにすることで、局在振動の構造的起源に迫る。
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