研究領域 | 「学習物理学」の創成-機械学習と物理学の融合新領域による基礎物理学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04524
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
山地 洋平 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, グループリーダー (00649428)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 量子もつれ / 多体電子系 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、高温超伝導体を始めとする量子物質の分光学スペクトルを高精度にシミュレーションするため、励起状態を記述する多体基底系の次元を、機械学習を用いて最小化する。得られたシミュレーション手法を用いて、高温超伝導体及び量子スピン液体候補物質の角度分解光電子分光法、中性子散乱および共鳴非弾性X線散乱実験データを解析し、高温超伝導を制御する主たる因子の解明および量子物質における創発粒子研究に新たな光をあてることを目指す。 2023年度は、ニューラルネットワークを用いた学習のためのデータ作成のため、「富岳」における大規模計算を可能とするための数値コード開発と、多体基底最適化の基礎データとなるスペクトル計算を行った。主記憶容量が小さな「富岳」の有効活用のため、多変数変分モンテカルロ法(https://www.pasums.issp.u-tokyo.ac.jp/mvmc/)への角度分解光電子分光法、非弾性中性子散乱および共鳴非弾性X線散乱スペクトル計算機能の省メモリ実装を行い、ベンチマークターゲットとして1次元ハバード模型のモット絶縁相における非弾性中性子散乱スペクトルをスーパーコンピュータ「富岳」を用いて計算し、1次元系で高精度な結果が得られる数値手法の結果を再現した。他の計算手法の適用が難しくなる2次元系および金属相における計算を2023年度末から行なっている(出版論文を準備中)。 2023年度に得られた多変数変分モンテカルロ法によるスペクトルの計算結果は、国際学会での招待講演(CCP2023、MPQCP2024)でも紹介した。また、2023年度には人工ニューラルネットワークを搭載した多変数変分モンテカルロ法の公開へ向けたコード整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「富岳」の有効活用のために省メモリコード実装を行ったため、当初の2023年度計画よりも遅れが生じ、ニューラルネットワークによる多体基底の最適化への着手が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
計画の遅れを取り戻すため、基底選択を2段階に分けて、層数が小さな人工ニューラルネットワークによる多体基底の最適化による早期の成果創出と、深層ニューラルネットワークの実装・応用を行う。 多変数変分モンテカルロ法に実装された2層人工ニューラルネットワーク内のパラメータ微分によって、多変数変分モンテカルロ法の計算コストにおいて大きな割合を占める、フェルミ統計性を担うパフィアン計算の回数を増やすことなく、多体基底の拡張を行い、100格子点で数10万次元を超える次元の基底系から特異値分解を用いて基底選択を行う。これにより、2023年度に取り組んだ有効模型解析を基礎として、100格子点を超える銅酸化物高温超伝導体Bi2201、Bi2212の第一原理有効ハミルトニアンのスペクトル計算を行い、3倍程度異なる両物質の転移温度を生み出す要因の解析を行う。 並行して、2層人工ニューラルネットワーク(ボルツマン機械)を深層ニューラルネットワークに切り替え、パラメータ微分空間の生成に取り組み、手法のさらなる高精度化を目指す。
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