研究領域 | 生体反応の集積・予知・創出を基盤としたシステム生物合成科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04559
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
田中 俊一 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70591387)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | プレバイオティクス / オリゴ糖 / 酵素 / 人工結合タンパク質 / タンパク質工学 |
研究実績の概要 |
本年度は、①分岐型結合に特異性をもったオリゴ糖合成酵素の開発、②グリコシルアクセプターの多様化、の2つの方向性で研究を進めた。 ①分岐型結合に特異性をもったオリゴ糖合成酵素の開発 人工低分子抗体モノボディ(Mb)を利用する独自の酵素機能改変技術「Enzyme Engineering by Proxy」を用いることで、β-galactosidaseの特異性を直鎖型β-1,4から分岐型β-1,3へと改変できることを見出している。直鎖型から分岐型への改変度合いは70%近くを実現しており、さらに、酵素自体には全く手を加えていないために比活性への影響はなく、GOSの収量低下も見られない。今年度は、β-galactosidaseとGOS、β-galactosidase/Mb複合体、β-galactosidase/Mb複合体とGOS、の3つの構造決定に成功し、Mbが特異性を改変する分子機序を解明した。現在、同じβ-galactosidaseを対象に他の分岐型β-1,6への改変を試みている。 ②グリコシルアクセプターの多様化 Aspergillus fijiensis由来β-fructofuranosidaseを対象に、低カロリーでありながらプレバイオティクスとしての機能も期待されている糖アルコールに焦点を当て、フラクトシル化を検証した。その結果、Maltitolにおいて新たなオリゴ糖の産生が確認された。NMR解析とMALDI-TOF/MS解析から、従来のFOSとは異なる3糖のフラクトシル化マルチトール(F-Mal)を特定した。その新規性は、SciFindernに未登録ということからも裏付けられた。純度95%以上のF-Mal溶液の調製にも成功し、現在はヒト腸内細菌叢モデルを用いてプレバイオティクス機能の評価を進めている。並行して、他のグリコシルアクセプターに対する反応性の検証も継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述の通り、①分岐型結合に特異性をもったオリゴ糖合成酵素の開発と、②グリコシルアクセプターの多様化、それぞれにおいて成果が得られており、特に②においては新規オリゴ糖の開発を初年度に達成できたことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
①分岐型結合に特異性をもったオリゴ糖合成酵素の開発 β-galactosidaseを対象に他の分岐型β-1,6への改変に取り組むとともに、Aspergillus fijiensis由来β-fructofuranosidaseを対象に直鎖型β-2,1から分岐型β-1,6への改変を試みる。 ②グリコシルアクセプターの多様化 初年度とは異なる種類の糖アクセプターに対する反応性を検証し、引き続き新規オリゴ糖の開発と機能性評価を進めていく。
|