研究領域 | 生体反応の集積・予知・創出を基盤としたシステム生物合成科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04569
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
工藤 慧 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (80828161)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ポリケタイド / 中分子 / 天然化合物 / 大環状化 / 放線菌 / 合成生物学 / 遺伝子工学 |
研究実績の概要 |
天然化合物は生物活性物質の宝庫であり、とりわけ環状中分子は医薬品シーズとして有利な性質を持つ。そのため革新的な誘導体化技術が望まれているが、多数の不斉点を含むなど極めて複雑な構造を有するため、化学合成は容易ではない。そこで生合成機構を利用した方法論の開発が重要であると考えられる。以上の背景より本研究ではI型ポリケタイド合成酵素(I型PKS)における大環状化機構を利用・改変し、新規環状中分子を得ることを目的とした。中分子天然化合物の生合成を改変するためには、100 kb超の巨大な生合成遺伝子クラスターを直接操作する技術が必要であるが、我々はI型PKS遺伝子を精確に改変することが可能な独自技術、in vitroモジュール編集技術を開発することに成功している。本技術により、I型PKS遺伝子を含む生合成遺伝子クラスター全長をクローニングした細菌人工染色体を鋳型として異なるI型PKSシステムの環状化機能を移植した。改変した遺伝子を宿主放線菌に導入し、異種発現させることで目的物質の生産を検証した。その結果、(元の生産菌では)直鎖状ポリケタイドを生合成するI型PKSに、環状ポリケタイドを生合成するI型PKSの環状化ドメインを移植したところ、新規化合物を生産することに成功した。本化合物を単離・構造決定したところ、新奇な54員環ラクトンであることを明らかにした。さらに移植範囲を比較検討することで、環状化ドメインが効率的に機能する移植範囲を見出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一化合物ではあるが、直鎖状天然化合物を環状化した正に新奇な環状中分子化合物の取得に成功したという点で、本研究の大きな目的は一つ果たされたと考えている。本手法の適用範囲拡大や、新たな環状化機構の導入など、知見やノウハウを蓄積して体系化していくことが望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
同様の戦略を他のI型PKSシステムに適用することで更なる新規環状中分子の取得を目指すとともに、非リボソームペプチド合成酵素様の環状化機構の移植にも取り組み、環状中分子デザインのレパートリー拡張を推進する。
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