今後の研究の推進方策 |
<シリコンナノ構造上のキラル粒子のエナンチオ選択的捕捉> シリコンナノ構造は、シリコン単結晶をプラズマドライエッチングで加工するブラックシリコンを用いる。現在、光渦ビームは1064 nm で発生可能であるが、新たに空間光位相変調素子を購入し、効率的にMie共鳴を利用できる 波長808 nm~470 nmで光渦ビームを発生できるようにする。捕捉対象とするナノ粒子は、三重大学工学研究科の八尾浩史教授より、キラル金・銀クラスター並びに蛍光性キラル色素会合体を御提供頂き、使用する。光渦の巻き方向と、D体、L体のそれぞれのキラルな構造で、捕捉効率(捕捉量)を顕微(二色性)ラマン分光法、顕微蛍光分光法で評価する。D体、L体の捕捉効率の差を利用して、ラセミ体からの選択的捕捉にチャレンジする。 <高分子ドロップレット内の渦流誘起とキラル色素会合体形成> ポリアルキルビニルエーテルやポリジエチルアクリルアミドを水中で光保捕捉すると、マイクロドロップレットを形成できる。興味深いことに、そのドロップレット内では、さらにまた水と高分子が相分離している。この二重に相分離したマイクロドロップレットは、応募者らが初めて発見したユニークな構造である(M. Matsumoto et al, & Y. Tsuboi, Langmuir, Vol. 37 (2021), 2874、後述)。つまり、このマイクロドロップレット内は屈折率の明確なコントラストがあるので、Mie共鳴で増強した光圧が働き、渦流が発生する。この、一方向に巻く渦流をホモキラリティーの起源とする。ドロップレットに抽出した色素分子は濃縮されるので、会合体を形成しやすい。さらに、渦流に加えて光渦の作用もあり、エナンチオ選択でキラルな色素 J 会合体が形成されると考える。
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