研究領域 | 超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
23H04625
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長谷川 丈二 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任准教授 (60726412)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メソポーラス材料 / 相分離 / ハイドロガーネット / カルサイト |
研究実績の概要 |
熱分解誘起相分離挙動を調査する前駆体として、ハイドロガーネット系と方解石(カルサイト)系の2種類の物質群について、水熱反応による合成・粒子形態・サイズの制御を試みた。Sr3Fe2(OH)12ハイドロガーネットについては、菱面十二面体形状で粒子サイズが比較的揃った粒子を作製した。さらに、ハイドロガーネット多面体粒子に熱処理を施すことで、脱水を伴う熱分解反応が起こることでSrFeO3-δペロブスカイトとSrCO3へと相分離し、SrCO3の選択除去により三次元的につながったメソ多孔構造を有するSrFeO3-δ多面体粒子の合成に成功した。加えて、in-situ X回折測定により、この結晶相転移過程においては、中間相としてSr2+xFe2O5(OH)2xという組成をもつ“オキシハイドロガーネット”が生成することを明らかとした。この結晶相は新たな超セラミックスとなる可能性として期待できる。また、CO酸化実験をモデル系とした評価により、SrFeO3-δ多面体粒子が優れた酸化触媒として作用することを見出した。 一方、カルサイト系においては、これまで困難とされてきたMnCO3/ZnCO3固溶体の粒子形態・サイズ制御を試みた。その結果、Mn/Zn = 0.1~0.2の菱面体形状を有する粒子の作製に成功した。現在、アンモニア気流中における焼成により、カルボジイミド固溶体への変換・超セラミックスとしての物性評価を行っている。加えて、その他の遷移金属元素の組み合わせについても固溶体粒子の作製を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sr3Fe2(OH)12ハイドロガーネットの熱処理によるSrFeO3-δペロブスカイトへの結晶相転移過程の途中で、Sr2+xFe2O5(OH)2xオキシハイドロガーネット相が生成することを見出し、これが超セラミックスの候補材料として期待される。また、副相として生成するSrCO3を除去することにより、メソポーラス多面体粒子の作製に成功し、CO酸化能の評価により優れた酸化触媒として応用可能であることを見出した。 また、カルサイト系において、これまで困難であったMnCO3とZnCO3の固溶体粒子の作製および形態制御について大きな進展を得た。今後、アンモニア気流中におけるカルボジイミドへの変換が成功すれば、新たな超セラミックス材料となることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
Sr-Fe系について、Feを異種元素に置換したハイドロガーネット粒子の作製・形態制御を行い、ペロブスカイトおよびオキシハイドロガーネットの機能開拓・機能向上を目指す。また、他のハイドロガーネット系についても粒子の作製・形態制御を検討する。特に、水蒸気熱処理による超セラミックスの作製が報告されているBa-In系や、酸化触媒として期待されるBaCeO3-δペロブスカイトの前駆体となりうるBa-Ce系について精力的に検討を進める。 カルサイト系については、引き続きMnCO3/ZnCO3固溶体の粒子形態・サイズ制御に関する検討を進め、さらに広範囲のMn/Zn比での粒子作製を目指す。加えて、アンモニア気流中における焼成によるカルボジイミド化や、空気中における焼成によるスピネル多面体粒子の作製を検討する。うまくできた試料については、酸化触媒としての性能評価を行う。さらに、他の遷移金属の組み合わせにおいても固溶体粒子の作製を行い、新たな超セラミックスの創出を目指す。
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