研究領域 | 超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
23H04631
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
恩田 健 九州大学, 理学研究院, 教授 (60272712)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 時間分解分光 / 超セラミックス / 光化学 / 半導体光触媒 / 配位構造体 |
研究実績の概要 |
本研究では、超セラミックスに様々な外部刺激を与えた時に起こる動的過程を、独自開発した広時間領域多波長分光装置を用いて解明することを目的としている。超セラミックス内で起こる過程は、その複合的な構造を反映して広時間領域、広エネルギー領域にわたる。そこで、100フェムト秒から秒以上の時間領域、中赤外から紫外光の過渡吸収、時間分解発光測定が可能な装置を用いて、そのような動的過程の全体像を明らかにする。本年度は、主に人工光合成に用いられる金属錯体-粉体酸化物半導体の光励起過程の解明に取り組んだ。二酸化チタンにコバルトポルフィリンを吸着させた電極を用いた色素増感電気化学セルによる水の光酸化系では、「広時間領域、多波長」分光装置の利点を活かし、同電極の可視過渡吸収分光による錯体の励起状態および時間分解赤外分光によるキャリアの時間分解計測に成功した。また窒素ドープタンタルとルテニウム錯体の粉体複合体を用いたCO2光還元系では、大気中での時間分解赤外計測を行い、光キャリアと錯体のダイナミクスを独立して計測することに成功した。また領域内共同研究として、配位ポリマーにおける光励起状態の解明、ビピリジニウム誘導体の短寿命発光過程の観測、光CO 脱離を起こす Ru 錯体の光反応過程の解明なども行った。これらの成果は、従来用いられてきた限られた波長、時間領域の時間分解分光装置では明らかにできないものであり、本測定の有効性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、金属錯体-粉体酸化物半導体からなる超セラミックス系を中心に研究を行った。二酸化チタンにコバルトポルフィリンを吸着させた電極を用いた色素増感電気化学セルによる水の光酸化系では、「広時間領域、多波長」分光装置の利点を活かし、同電極の可視過渡吸収分光による錯体の励起状態および時間分解赤外分光によるキャリアの時間分解計測に成功した。また窒素ドープタンタルとルテニウム錯体の粉体複合体を用いたCO2光還元系では、大気中での時間分解赤外計測を行い、光キャリアと錯体のダイナミクスを独立して計測することに成功した。また領域内共同研究として、配位ポリマーにおける光励起状態の解明、ビピリジニウム誘導体の短寿命発光過程の観測、光CO 脱離を起こす Ru 錯体の光反応過程の解明なども行った。以上のことから研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの金属錯体-粉体酸化物半導体の測定は実際に光反応が起こっていない大気中で行った。そこで、本年度はこれら系を、実際に反応が起こっている状態での計測、すなわちその場観測をめざす。そのために水の光酸化系では、分光電気化学セルを作製し、光電気化学反応が起こる条件での時間分解計測を行う。一方CO2光還元系では、懸濁状態分光セル開発を行い、犠牲試薬などを含み実際にCO2光還元が起こる反応条件で時間分解計測を行う。また新たな領域内共同研究にも積極的に取り組む。さらにより汎用的な時間分解計測手段の開発にも取り組む。本年度は新たなパルス光源として、従来のものより安定した高繰り返しフェムト秒光源を購入した。これを用いて時間分解フーリエ変換(FT)分光装置を開発する予定である。FT分光法は、空間的に分散させる回折格子を用いない分光法であるため散乱光に強いことが知られている。また連続光光源を用いた装置は広く普及しており、顕微や全反射など様々なオプションも市販されている。そのため超セラミックスのような散乱光の大きな不均一固体試料の測定をさらに容易かつ短時間で行うようになることが期待される。
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