研究領域 | 力が制御する生体秩序の創発 |
研究課題/領域番号 |
23H04726
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
福井 一 徳島大学, 先端酵素学研究所, 准教授 (80551506)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 力学応答 / 力操作 / ゼブラフィッシュ / 心臓管腔形成 |
研究実績の概要 |
令和5年7月より徳島大学先端酵素学研究所へ異動し、セットアップ後に研究を再開した。研究計画①では、双方向血流から生じる力作用を人為的に模倣して個体心臓へ入力し、心内膜内皮に与える力学的データと生体シグナルデータを共に定量計測することを目指している。当初の予定通り力操作する実験系:磁気ピンセットを新たな研究室へ実装した。また共同研究先と磁性流体を用いた検討を継続して行ってきた中で、力の方向性(垂直応力と接線応力)の違いを区別した生体応答シグナル(Ca2+流入)を認めた。これは力の特性を区別して認識する機構解明の糸口となる知見であると考えている。次年度、力の本質理解に向けて導かれた仮説(接線応力により生じる摩擦抵抗を介した熱変換を認識した生体機構)を新たに検討する。 研究計画②:双方向血流を感知して細胞内の力学応答機構を誘導する「因子」を同定するため、当初の予定通りスクリーニング系を樹立してきた。特にカベオラ近傍が生体力学応答の場として機能することが示唆される知見を得ていることから、近位依存性ビオチン標識法を活用するための系統樹立を進めてきた。まず心内膜内皮細胞のカベオラをGFP蛍光標識する系統と、GFP結合タンパク質が繋がれたAPEX2を発現する系統の樹立が完了した。さらに、APEX2と比較して細胞毒性が低く、且つ、分子量が小さいことでより近接したものが特異的に標識可能とされるTurboIDとUltraIDを発現する系統を樹立できた。複数の実験条件を検証できる系の準備が整ったため、次年度は、樹立した系統の交配からプロテオミクス解析を行い、カベオラ近傍に局在する力学応答因子のスクリーニングを完了する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年7月より徳島大学先端酵素学研究所で独立した研究室運営を開始したため、セットアップに時間を要して当初の研究計画よりやや遅れていると評価した。ただし、使用する動物モデルである小型魚類の飼育設備に向けた研究室改装が完了し、2024年2月に稼働開始した。想定していた実験計画について、大幅な変更はなく予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
目標の1つである力操作する実験系の確立について、磁性流体を用いた検討を継続して行ってきた中で、これまで観察してきた力の方向性(垂直応力と接線応力)の違いを区別した生体応答シグナル(Ca2+流入)を認めることに成功した。今後は本実験系の確立を目指すと共に、心臓管腔内で作用する力の特性を模倣できるような新たな力操作系の開発も行う。また、力の方向性の違いがなぜ生体シグナルを調節できるのか、実験結果を基にすることで新たな仮説を立てた。本仮説では、双方向のせん断応力から生じる摩擦抵抗を介した熱変換がシグナル応答要因となることを考えており、検証に向けて熱応答性チャネルタンパク質の関与、熱変化定量方法の開発、熱操作法の開発を行う。そして本研究を推進することで、力を介した新たな生体応答メカニズムを提唱することができると考えている。
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