研究領域 | 植物の挑戦的な繁殖適応戦略を駆動する両性花とその可塑性を支えるゲノム動態 |
研究課題/領域番号 |
23H04747
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
池田 陽子 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (80467688)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エピゲノム / トランスポゾン / 植物 |
研究実績の概要 |
植物の性決定機構の変化を介した繁殖戦略の構築メカニズムや、雌雄のゲノムの制御には、エピゲノム制御が重要な役割を果たしていることが知られている。エピゲノム修飾の中でも、シトシンのメチル化は遺伝子やトランスポゾンの発現に影響を与える。性決定関連因子やインプリント遺伝子なども、トランスポゾンの挿入がトリガーとなって構築されたと考えられており、繁殖戦略の進化と、エピゲノム制御及びトランスポゾン転移は密接な関係がある。 申請者らは、DNAメチル化などの植物のエピゲノム制御機構がどのように進化してきたかを明らかにするため、進化上、陸上植物の基部に位置するゼニゴケを用い解析を進めた。これまでに、ゼニゴケは被子植物で明らかになったDNAメチル化の制御機構との共通点だけでなく、動物と似たDNAメチル化制御システムの特徴を複数有することが明らかになってきた。また、最近の報告から、ゼニゴケでは、これまで被子植物で知られている報告とは異なり、DNAメチル化だけでなく、ヒストンH3K27me3の修飾がトランスポゾン領域に局在しており、発現の抑制に関わることが示唆されている。これらを踏まえ、ゼニゴケにおけるDNAメチル化とH3K27me3などのヒストンによるトランスポゾン制御の多層的な制御の全体像を明らかにすることを目的として、DNAメチル化に関与する変異体を用いてDNAメチル化とトランズポゾンの制御について解析するとともに、DNAメチル化とヒストン修飾の相互作用についても解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼニゴケは、進化上、陸上植物の基部に位置するとされており、維管束や気孔を持たないなど、原始的な植物の特徴が多く残っている。また、生活環の殆どが半数体であり、雌雄異株である。栽培方法や、形質転換やゲノム編集技術も整備されており、形質転換体や変異体を効率よく得ることができる。これらの特徴を利用して、ゼニゴケを用いることで植物の進化過程でエピゲノム制御がどのように変化してきたかを考察することができる。我々は、ゲノム編集を利用することにより、DNAメチル化に関わる変異体を効率的に得ることができた。これらを用いて表現型の解析を進めた。 最近の報告から、ゼニゴケでは、DNAメチル化だけでなく、ヒストンH3K27me3トランスポゾン領域に局在しており、発現抑制に関わることが示唆されている。これは維管束植物とは異なる特徴である。ゼニゴケトランスポゾンの制御におけるDNAメチル化とヒストンH3K27me3との関係を明らかにするため、ゼニゴケを用いたクロマチン免疫沈降法についていくつかの条件を行い、系を立ち上げることができた。この方法により、ゼニゴケメチル化関連変異体におけるヒストン修飾のゲノムワイド解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ゼニゴケを用いたクロマチンIP解析の系を立ち上げることができた。今後は、他のヒストン修飾抗体を用い、H3K27me3以外の修飾についても解析を進めるとともに、得られたChIP-seqデータの解析を進め、DNAメチル化や遺伝子発現データと照らし合わせ、ゼニゴケDNAメチル化とヒストン修飾を介したトランスポゾン制御について明らかにする、
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