公募研究
本研究では,卵細胞と中央細胞間の受精領域への精細胞の配置を制御する斑点状構造の形成機構を明らかにすることで,生殖様式の進化を駆動する革新的な機能分子の進化過程の解明を目指す.今年度は,EC1がどのように細胞外構造を形成するかを検証するため,EC1のアミロイド凝集性を検討した.大腸菌のアミロイドタンパク質複合体の一部を目的タンパク質に置換して一過的に発現させてアミロイド凝集を検証する実験系を用いて,EC1がアミロイド凝集性をもつことが示唆された.シロイヌナズナの未受精胚珠の樹脂切片を作製して,アミロイド染色したところ,卵細胞と中央細胞の間に点線状の蛍光シグナルが検出された.光-電子相関顕微鏡法(CLEM)での観察を試みたが,切片厚の影響か蛍光像と電子顕微鏡像がうまく重ならなかったため,サンプル調整の改善が必要である.卵細胞と中央細胞間の細胞外構造が,進化的に保存されているかを調べるため,基部被子植物であるスイレンの未受精胚珠の形態観察をおこなった.卵細胞と中央細胞の間に特異的な細胞外構造かを検証するために,同一胚珠内の卵装置の全ての細胞を観察する必要であった.準超薄の厚さで連続切片を作製して,複数の胚珠を観察した.繊形装置様の構造をもった助細胞と中央細胞は細胞膜が密接していたが,もう1つの卵細胞と考えられる細胞は中央細胞との間に電子密度の高い構造を含む細胞外領域が観察された.卵装置の3細胞が観察できた胚珠の多くで同様の細胞外領域が見られた.
2: おおむね順調に進展している
アミロイド凝集性の検討からEC1がどのように細胞外構造を形成するかの手掛かりを得られた.CLEMを使った組織学的な解析からも,蛍光観察では判別のつかない微細構造を電子顕微鏡像と対応着けられる感触を得た.進化的に基部に位置するスイレンでも卵細胞と中央細胞の間にのみ細胞外構造を確認することが出来た.
今後は,切片厚を薄くするなどCLEMの撮像条件の検討を進めて,アミロイド染色で染まる構造を電子顕微鏡で観察する.異なる発生パターンの雌性配偶体の種でも卵細胞の細胞外構造が保存されているか検証する.比較ゲノムにより,EC1の進化的な変遷を調べる.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)
Plant And Cell Physiology
巻: in press ページ: in press
10.1093/pcp/pcae018
bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2024.01.31.578224