研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
23H04774
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
平安 恒幸 金沢大学, 先進予防医学研究センター, 准教授 (30585170)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 免疫センサー / LILRA2 / 血管恒常性 / 自己認識 |
研究実績の概要 |
LILRファミリーは、霊長類に特有な免疫レセプター群であり、抑制化LILRBと活性化LILRAから構成される。抑制化LILRBは自己認識により免疫制御を担うが、活性化LILRAの機能はその多くが未解明のままである。研究代表者は最近、LILRA2が自己由来成分を新規リガンドとして認識することを発見した。同定した自己由来成分は血管恒常性に重要な役割を担う分子であるため、LILRA2は血管恒常性に関わる可能性が考えられる。そこで本研究では、LILRA2が自己由来分子をリガンドとして認識することによる有益な生体応答とその破綻に伴う疾患発症メカニズムの解明を目的とする。 本年度は、前述した目的を達成するために、主に自己由来分子を認識するLILRA2の分子生理的機能の解明を行った。まず自己由来分子の性質について解析したところ、LILRA2は、可溶型の自己由来分子は認識せず、固相化状態を認識することが明らかとなった。また、LILRA2発現細胞である単球をリガンドとなる自己由来分子で刺激し、サイトカインの測定を行った。その結果、単球はLILRA2リガンドを認識して、IL-8を産生することが明らかとなった。この免疫応答にLILRA2のブロッキング抗体を加えたところ、IL-8の産生がほぼ完全に阻害された。この結果は、LILRA2だけで自己由来成分による免疫応答が説明できることを示している。さらに、IL-8以外の遺伝子発現の変化を調べるために、RNA-seq解析も行った。その結果、LILRA2リガンドによる単球の活性化は、炎症パスウェイと有意に関連することが明らかとなった。また、LILRA2のブロッキング抗体を加えたところ、ほとんど遺伝子発現の変化が認められなかった。これらの結果から、自己由来分子を認識するLILRA2は、炎症反応を誘導する役割を担っている可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己由来分子が固相化された状態をLILRA2が認識することが分かり、その標的分子を探索する必要性が生じたため。また、LILRA2のトランスジェニック用のコンストラクトがきちんとマウス細胞で発現するための最適な条件を見つけるのに時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、LILRA2トランスジェニックマウスの作製を検討し、生体内におけるLILRA2と自己由来成分の有益な生体応答とその破綻に伴う疾患発症メカニズムを明らかにする。また、自己由来成分が結合する標的分子の探索も行う。
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