研究領域 | 光の極限性能を生かすフォトニックコンピューティングの創成 |
研究課題/領域番号 |
23H04805
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下村 優 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (40908539)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光コンピューティング / イジングマシン / 組合せ最適化問題 |
研究実績の概要 |
本研究では,光多重化手法を活用し,光の極限性能を活かした並列演算型空間フォトニックイジングマシンの開発に取り組んでいる.本年度では,並列演算を実現する空間多重化を空間フォトニックイジングマシンに導入し,提案システムの有効性を検証した. まず,組み合わせ最適化問題において解の評価指標であるイジングハミルトニアンの表現自由度を拡張するため,マルチコンポーネントモデルに基づいた空間多重化光イジングマシンを実装した.複数の線形演算からなるイジングハミルトニアンをワンショットで取得でき,従来手法では解探索困難なナップザック問題の最適解導出を実現した.また光強度変調により解探索の効率を向上させる動的係数探索法を提案した.従来利用されてきた探索アルゴリズムであるシミュレーテッドアニーリング法と比べ,最適解の導出確率が3倍以上増加し,ハード・ソフトの両面から空間フォトニックイジングマシンの機能拡張を実現した. 次に,空間多重化を利用した並列演算型空間フォトニックイジングマシンの構築を実施した.空間多重化とバイアス位相の設計により,組み合わせ解の評価値であるイジングハミルトニアンの並列演算を行った.空間多重化の数に応じて,規定反復回数における最適解導出の確率が上昇することを数値シミュレーションにより確認した.また,光学システムを構築し,スピン数100が必要な最小カット問題の解探索を実施した.多重化数に応じて探索精度が上昇し,提案手法の有効性を実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した期間通り,提案システムの有効性を実証しており,国際学会への発表も行なっている.論文執筆にも着手しており,次年度で学術雑誌の投稿を予定している.
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今後の研究の推進方策 |
空間多重化とバイアス位相の設計により組合せ最適化問題の解探索に不可欠なイジングハミルトニアンの並列演算を光学システムにより実現した.並列演算によって取得された複数のイジングハミルトニアンに基づくスピン更新アルゴリズムの改良によって探索効率を向上できる.今年度では構築システムに適応したアルゴリズムの導入し,最適解の高速探索をめざす.また,多重化数を拡張可能なバイアス位相を設計し,多重化数が4以上となる光学システムの構築をめざす.
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