研究領域 | 環太平洋の環境文明史 |
研究課題/領域番号 |
24101701
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
嘉幡 茂 愛知県立大学, 国際文化研究科, 客員共同研究員 (60585066)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 考古学 / 先史学 / 交易 / メソアメリカ / 国際情報交換 / メキシコ / テオティワカン / 黒曜石 |
研究実績の概要 |
古代メソアメリカ文明圏に属する初期国家テオティワカンでは、都市中心部に巨大モニュメント群が建設され、その象徴する宗教力によりメソアメリカ全域に影響を及ぼす国家機構を築いた。これを物質的に支えたのが、各地域の資源や製品をこの古代都市に集積し、それらを循環させた交易ネットワークである。しかし、紀元後6・7世紀におけるテオティワカンの覇権喪失の要因に関して、この交易ネットワーク・システムの破たんと関連付け考察する研究は乏しい。本研究は、この古代国家の崩壊プロセスを説明するための新たな理論構築と、考古資料を基に実証することを目的としている。 これに向け、平成24年度では下記の活動を行った。 1.メキシコの黒曜石原産地でのサンプリング(ピサリン原産地とサクアルティパン原産地での、GPSを用いたサンプリング)。 2.アリゾナ州立大学・テオティワカン研究所での黒曜石石器の肉眼分析(「月のピラミッド」と「太陽のピラミッド」出土の黒曜石石器の肉眼分析)。 3.資料批判(テオティワカンの交易システムを扱う先行研究の把握)。 現段階では、この衰退プロセスを説明するための理論的枠組みがほぼ完成しており、「日本ラテンアメリカ学会」や、「Society for American Archaeology」そして「American Anthropological Association」で成果を発表した。一方、愛知県立大学・多文化共生研究所・研究雑誌において、本研究の成果を英語論文「Symbolism, Materialization, and Procurement: An Analysis of Obsidian Artifacts from Teotihuacan Monuments」と日本語論文「古代交易システムの復元に向けて:周辺から周辺へ、そして周辺から中央へ」を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度において、初期国家テオティワカンの覇権喪失要因について、古代交易システムと関連付け理論的枠組みが完成したことは大きな前進である。また、この理論構築は、先行研究の把握や批判、そして最新の考古学・人類学理論研究の成果のみを取り入れ行ったのではなく、メキシコ現地における原産地でのフィールドワークや遺物分析の結果も考慮したものである。従って、より実証的な理論構築と言える。 この進捗状況をふまえ、自己点検を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度の研究でより重要視すべきは、本研究が提唱している理論的枠組みの完成度をより高めることである。そのためには、メキシコ現地におけるサンプリングとXRF分析の精度を高めるための詳細なデータベースの強化が求められる。 データ収集を行い、これを基に理論的枠組みを修正し、最終的に本研究のテーマを理論面と実践面の両者から解明する。 研究成果に関して、Society for American Archaeology(アメリカ考古学協会)と古代アメリカ学会での学会発表、そして『古代文化』や『Archeologia Mexicana』への論文寄稿を予定している。
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