研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102501
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
難波 康祐 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50414123)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ムギネ酸 / ファイトシデロフォア / 実用的合成 / L-アゼチジン-2-カルボン酸 / アルカリ性不良土壌 / ムギネ酸・鉄錯体トランスポーター |
研究実績の概要 |
ムギネ酸類の大量合成に向けての最大の課題は、原料となる L-アゼチジン-2-カルボン酸が非常に高価なことであった。そこで平成24年度では、L-アゼチジン-2-カルボン酸の効率的な合成法の開発を検討し、以下の実用的合成法の確立に成功した。すなわち、安価なトシルボックアミドを出発原料とし、5-ブロモ-1-ペンテンとのアルキル化を行った後、オゾン酸化によりアルデヒドへと導く。ついで、触媒的不斉クロル化反応に続くPinnick酸化によりα-クロロカルボン酸へと変換した後、アルカリ性加水分解条件に付すことで、Boc基の除去と環化反応を一挙に行い、N-Ts-アゼチジンカルボン酸へと導く。この段階で再結晶により精製し、最後にTs基を除去してL-アゼチジン-2-カルボン酸を得るルートである。本法は、出発原料から最終生成物に至るまで一度もカラム精製を必要としないことから、大量合成への適用が容易であり、実際に25gスケールへの適用も可能であった。以上の合成法の開発により、大量のアゼチジンカルボン酸を低コストで供給することが可能となったことから、今後はムギネ酸類の大量合成とこれを肥料として用いたフィールド実験への展開が期待できる。また、高価なアゼチジンカルボン酸に代わる安価なアミノ酸を導入した種々のムギネ酸代替体を合成し、それらのトランスポーター通過活性を測定した。その結果、プロリンを導入したムギネ酸代替体がムギネ酸と同様の鉄輸送活性を保持していることを明らかにした。今後は、実際のイネの生育における本代替体の添加効果を明らかにし、安価な代替体の肥料としての展開も検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の到達目標であった、L-アゼチジン-2-カルボン酸の低コスト合成を達成できた。これにより、来年度の到達目標であるムギネ酸類の大量合成とこれを肥料として用いたフィールド実験への目処が立った。また、独自に開発した1,3a,6a-トリアザペンタレンの発蛍光型光親和性ラベルとしての展開に向けて、トリアザペンタレン類の置換基効果を明らかにすることが出来た。今後のトランスポーター標識化法開発に向けて、ムギネ酸へのトリアザペンタレン類の導入法を種々検討し、トリアザペンタレン導入型ムギネ酸の合成を達成した。以上の結果より、平成25年度の課題である、ムギネ酸誘導体を肥料として用いたフィールド実験およびトランスポーター標識化法の開発が円滑に推進出来る。
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今後の研究の推進方策 |
大量に得られたL-アゼチジン-2-カルボン酸を用いて、デオキシムギネ酸の大量合成法の確立を行う。我々が先に開発した実用的合成法は、精製に大量の樹脂を用いる点や毒性を有するNaBH3CNを大量に必要とすることに未だ課題を残している。そこで、新たなルート設計とマイクロリアクターを適用した大量供給法の確立を達成する。これにより得られたデオキシムギネ酸を用いて、実際のイネやトウモロコシのアルカリ性不良土壌での栽培実験を行う。またこれと平行して、トランスポーターを標識可能なムギネ酸誘導体を合成する。すなわち、既に確立したムギネ酸のプローブ化法を用いて、光親和性ラベルをムギネ酸に導入し、光親和性ラベルの先にトランスポーターを通過出来ない立体的にかさ高い置換基を配置する。得られたトランスポーター標識用ムギネ酸を用いて、ムギネ酸・鉄錯体トランスポーターとの結合実験を行う。トランスポーターとの結合実験は、公益財団法人サントリー生命科学財団の村田佳子博士の協力の下行う予定である。
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