研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102503
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
西山 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (80291334)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | タンパク質膜挿入 / タンパク質膜透過 / MPIase / SecYEG / SRP / SecGの反転 / 糖脂質 |
研究実績の概要 |
膜タンパク質は、通常、シグナル認識粒子およびその受容体(SRP、SR)、タンパク質膜透過チャンネル(SecYEG)を介して、タンパク質生合成に共役して膜挿入する。我々は、膜挿入反応に関与する未知の因子を発見し、因子の同定・構造機能解析を続けてきた。因子は予想に反して糖脂質であることが判明したが、膜タンパク質と直接相互作用すること、膜挿入反応を触媒することなどを示し、この糖脂質が酵素様機能をもっていることを報告した。すなわち、この因子をMPIase(membrane protein integrase)と命名し、MPIaseが糖脂質酵素(Glycolipozyme)であると提唱した。 MPIaseは膜挿入反応に必須の因子である上、タンパク質膜挿入反応を促進する。一方、以前我々が同定した、SecGも同様に膜透過反応を促進する。SecGによる膜透過促進機構は、膜を2回貫通するSecGは膜透過反応に共役して反転-回復を繰り返し、SecAの構造変化を円滑にするためであることを見い出した。しかし、SecYEG単独ではSecGの反転は検出されなかった。このことは、SecGの反転には別の因子が必要であることを示唆している。MPIaseがこの因子である可能性を調べたところ、MPIase存在下でのみSecGの反転が認められた。さらに、MPIase非存在下ではSecEが接触面となるが、MPIaseが存在すればSecG近傍に接触面があることが判明した。また、SecYEGを過剰生産した膜と野生株から調製した膜を用意し、可溶化後SecYEGのプルダウンアッセイを行ったところ、野生株から調製した膜のみでMPIaseの共沈降が認められ、SecYEGとMPIaseがin vivoでも直接相互作用していることを支持する結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には、MPIaseが糖脂質酵素(Glycolipozyme)であることを提唱する論文を出版できた。また、MPIaseがSecGの反転に必須であることを示し、その理由がSecYEG2量体の構造に影響を及ぼすためであることを見い出し、論文投稿した。この論文に関しては、審査員の一部から追加実験を要求され、現在修正稿を用意している段階であるが、エディターからは好意的な意見が寄せられているため「おおむね順調に進展している。」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究で、MPIaseがSecYEGと直接相互作用することを支持する結果が得られたので、この系を活用してMPIaseとSecYEGとの相互作用について詳細に調べる予定である。また、化学架橋実験やゲルろ過カラムクロマトグラフィー実験なども駆使してMPIaseとSecYEGの相互作用地図を完成させる。また、MPIaseがリボソームと相互作用する可能性についても検証を進める。相互作用が認められた場合は、MPIaseと相互作用するリボソーム因子の確定を行い、この相互作用についても詳細に調べる。
|