公募研究
天然物シーズからも創薬では標的分子が同定されなくても信頼できる薬効評価系と安全性が担保されると臨床試験を開始することができる。私達はこれらのシーズとして柑橘系果皮から抽出されたノビレチンと低分子化合物 ST101 の臨床開発に携わっている。本研究では ST101 がアルツハイマー治療薬候補物質の有用性を確立するために海馬内アセチルコリン遊離量をリアルタイムでモニターするシステムを開発した。ST101 の腹腔内投与は用量依存性に海馬でのアセチルコリン遊離を促進した。この遊離はT型カルシウムチャネル阻害薬で完全に消失した。さらに、ノビレチンが T 型およびL 型カルシウムチャネルを活性化して、海馬および線条体でドパミン遊離を促進することを発見した。ノビレチン腹腔内および経口投与の両方で海馬および線条体でのドパミン遊離を促進した。その結果、MPTP 誘発のパーキンソン病モデルマウスにおいて、錐体外路系症状を改善し、同時に、認知機能障害も有意に改善した。ノビレチンの新たな作用機序と考えられる。今後は、ノビレチンによるドパミン遊離促進作用の認知機能改善および抗うつ作用との関連を追究する。次に、バナジウム有機錯体である VO(OPT) の脳血管再生と血流改善の関連について解析した。4血管閉塞脳虚血モデルラットにおいてVO(OPT) の虚血再還流直後からの慢性投与は海馬 CA1 領域における血管壊死を抑制し、同時の海馬内血流量を有意に改善した。今後は、血流改善効果と VEGF 等のサイトカイン誘導との関連を追究する。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の目的は、1)ST101 の標的カルシウムチャネルを安定発現した神経様細胞株と培養神経細胞を用いて、その神経再生および保護作用のメカニズムを明らかにする。2)微生物から単離したphosphatoqiunone B の血管再生のメカニズムを明らかにすることである。1)に関してはすでに T 型カルシウムチャネル活性化の生理的および病態での意義を明らかにした。すなわち神経保護、認知機能改善に関わる神経伝達物質であるアセチルコリンとドパミンの遊離を促進することを動物実験で証明し、 ST101による神経新生作用もアセチルコリン受容体阻害薬で抑制されることを証明した。2)に関しては血管再生に関わる VEGF とエリスロポエチンが VO(OPT) で誘導される結果を得ており、phosphatoqiunine B の血管再生メカニズムの解明の目的もほぼ達成している。
1)ノビレチンによるドパミン遊離促進作用の認知機能改善および抗うつ作用との関連を追究する:アルツハイマー病、パーキンソン病における認知機能障害では抑うつ状態がその引き金となる。神経伝達物質ドパミンは抑うつ状態の改善に関わる重要な神経伝達物質である。ノビレチンおよび ST101 によるドパミン遊離促進の詳細なメカニズムの解明、投与スケジュールを検討し、これらのシーズの抗うつ作用のメカニズムを明らかにする。2)血流改善効果と VEGF 等のサイトカイン誘導との関連を追究する:脳内でのエリスロポエチン、VEGF の発現細胞、機能について不明である。また、脳血管再生薬の研究も皆無であり、脳血流量改善との関わりを明らかにする。
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