研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102510
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関水 和久 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90126095)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 抗生物質 / 細菌 / 微生物 / 薬学 / 感染症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、我々が確立したカイコ黄色ブドウ球菌感染モデルを用いて、治療効果を指標とした独創的な探索法によって同定された、新規抗生物質カイコシンの作用機序を明らかにすることである。本年度において、新たに我々が確立した、薬剤耐性かつ温度感受性株を用いた薬剤耐性遺伝子同定法により、カイコシン低度耐性株の変異遺伝子を複数同定し、それらが同じ代謝化合物の生合成経路であることを見いだした。そこで、その生合成経路の最終代謝物を、カイコシンEの抗菌活性測定系に加えたところ、カイコシンEの抗菌活性が阻害されること、及びカイコシンEと代謝物を培地中で混合すると沈殿を生じることを見いだした。さらに、マイクロカロリーメーターを用いた解析から、カイコシンEとその化合物は1:1で結合することを見いだした。従って、カイコシンEの標的を同定できたと考えられる。また、カイコシンEの標的となる化合物の活性を阻害しても、ほ乳類の個体では、黄色ブドウ球菌と異なり急性致死に至るような役割をしていないことが知られており、カイコシンEのマウスに対する毒性が低いことも説明できる。さらに、これまでに知られている様々な抗生物質の標的と比べても、カイコシンEの標的は異なっており、その作用機序は新規メカニズムに基づくと考えられる。従って、カイコシンEは新規クラスの抗生物質であると考えられる。今後は、カイコシンEの膜障害性における、標的化合物との相互作用メカニズムの詳細について検討する必要がある。また、カイコシンEの標的同定に利用した温度感受性変異を用いた方法について、他の抗生物質や抗菌薬について利用できるか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最大の目的であった、新規抗菌環状リポペプチドのカイコシンの作用標的を同定できたことから、計画はほぼ達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
根研究の当初の目的の重要な部分について達成できたことから、今後はカイコシンEと同定した標的の膜障害における作用メカニズムの詳細、及び、今回標的の同定に用いた手法を他の抗生物質に応用できるか否か検討する。
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