研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102512
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
細谷 孝充 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60273124)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー / 有機化学 / 分子プローブ / 光親和性標識法 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
天然物リガンドや薬剤の標的タンパク質のみを高感度で検出できる新手法が強く求められている。これに対して今回、近年のプロテオミクス研究において汎用されているLC/MS/MS質量分析法に着目し、その原理を光親和性標識法における光ラベル化タンパク質の検出に応用することを目指した。すなわち、マススペクトル測定において特徴的なフラグメントが観測される官能基を検出用レポータータグとして光ラベル化タンパク質に導入することで、LC/MS/MS解析時、検出タグ由来のフラグメントを手がかりに光ラベル化タンパク質を網羅的に検出・同定する手法の利用を試みた。その結果、光ラベル化技術および検出用官能基導入に関するさらなる革新が必要であることが明らかになった。そこで、光ラベル化タンパク質の高感度検出への展開を念頭に、ジアジドプローブを迅速に創製するためのビルディングブロック部位の開発を検討したところ、多彩なブロックを効率よく合成できることが明らかになった。さらに、この検討の中で、ジアジドを維持したまま種々の反応条件下でブロックを利用できることも見いだし、光ラベル化のためのプローブ分子の簡便合成に向けた有益な情報を取得することに成功した。加えて、一連のアジド化学に関する検討結果をもとに、ジアジドビルディングブロックを利用した生体高分子の2成分間の連結にも応用し、タンパク質間相互作用解析への展開の足がかりを得ることができた。 また、標的同定技術に関して、本新学術領域内の班員との共同研究を開始した。具体的には、北海道大学薬学研究院の市川聡准教授が研究対象としている抗菌天然物が標的酵素のどの位置に結合しているかを同定するため、活性エステル部位を有するジアジド化合物を提供し、プローブ化を支援した。加えて、理化学研究所の田中克典准主任研究員と共同でジアジド化合物を用いる生体分子の新しい化学修飾法の開発にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で目標としている「標的タンパク質同定技術の革新」に関して、順調に進展させることができている。質量解析法を利用した標的タンパク質同定を試みる中、光ラベル化タンパク質を迅速かつ確実に同定するためには、光ラベル化技術および光ラベル化したタンパク質への検出用官能基導入技術のどちらもを大きく進展させる必要があることが明らかになった。そのため、光ラベル化技術のさらなる発展に向けて、その基盤として、光親和性標識プローブの迅速合成に役立つビルディングブロック開発に着手したところ、期待した以上の官能基許容性でジアジドビルディングブロックの変換が可能であることが明らかになった。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
検討の結果、光親和性標識後のアジドとの反応における標識効率が充分でないことが明らかになった。従って、これを解決すべく、ビオチンなどの検出基の改変により、光親和性標識されたタンパク質の検出効率の向上を目指す。加えて、引き続き、多彩なジアジドビルディングブロックにおいて、繊細な官能基であるアジド基を維持したまま変換する手法の開発を継続し、広範な生物活性化合物の光親和性標識プローブ化に有用な手法開発に努める。とくに、天然物をはじめとする生物活性化合物に対して、ジアジドビルディングブロックを用いるクロスカップリング反応や縮合反応などを行うことで、ジアジドユニットを導入した小分子を多種類合成する。
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