研究実績の概要 |
本研究では,以下のような分子の探索とその活性発現機構の解明を試みた。 1)ナラタケは美味な食用キノコであるが,植物や他のキノコに対する寄生性,病原性が極めて強い。ナラタケの寄生による病害は「ナラタケ病」と呼ばれ,果樹,サクラなどの木本類,野菜,他のキノコなどでの病害が報告されている,本課題では,この菌を培養し,原因物質の探索を行い数種の新規物質を得ることに成功した。これらの化合物はレタスに対して成長阻害活性を示した。 2)芝が周囲より色濃く繁茂し,時には枯れるフェアリーリングの原因物質として化合物2-azahypoxanthine (AHX)と imidazole-4-carboxamide(ICA)を,また,AHXでの植物体内での代謝産物として2-aza-8-oxo-hypoxanthine(AOH)を得ている。これらの化合物はイネ,コムギなどの収量を大幅に上げた。本課題では,これらの化合物の植物における分子標的の探索を行い,AHXの結合物質を得ることに成功した。 3)2004年,食用キノコであるスギヒラタケの摂取により,急性脳症が発生した。患者数は59名に達し,腎機能障害をもっていた17名が亡くなった。この急性脳症の解明は困難を極め,厚生労働省は「原因不明」と結論した。しかし,この研究班の班員であった研究代表者はその後も現在に至るまで研究を続け,単離した高分子2成分によって血液脳関門(blood brain barrier, BBB)が破壊されることを証明した。さらに単離が困難な不安定な低分子化合物(pleurocybellaziridineと命名)の存在を予測し,合成化学的にその存在を証明した。本課題ではBBBをin vitroで再現したBBBキットによって,高分子2成分あるいは高分子2成分とpleurocybellaziridineの3成分系での作用を検討した。
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