研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102515
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 慎一 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30415260)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 天然化合物 / 代謝 / 細胞形態 / 化学遺伝学 |
研究実績の概要 |
生命の遺伝情報はDNAにより継承され、そこから転写されたRNAと翻訳産物であるタンパク質により構築される。タンパク質は代謝物により活性の制御を受ける。近年、質量分析を代表とする分析技術の発展の恩恵を受けて、体内代謝物の組成には細胞の状態や病態が反映されることが分かってきた。しかし、どの成分がいつ、どこで働いているのか、明らかにすることは容易ではない。この理由の1つに、ゲノムに直接的にコードされていない代謝物に対して遺伝学の適用が困難であることが挙げられる。このような代謝物が制御する生命システムを化学遺伝学のアプローチで解析するため、本年度は、代謝物の機能変調を誘導する天然物リガンドの取得を試みた。具体的には代謝と生体膜、細胞形態との関係性を明らかにすべく、①アミノ酸代謝を変調する化合物と、②特定の生体膜構造を認識する化合物の探索研究を推進した。 ①アミノ酸代謝を変調する化合物の探索研究:分裂酵母をモデル生物とした探索系を構築し、特定のアミノ酸代謝に作用する天然物リガンドを約1,500の糸状菌の培養液抽出物から探索し、2種類の化合物を取得した。一方は既に報告のある化合物であったが、アミノ酸代謝との関連は報告されておらず、作用機序解析を進める予定である。他方については現在、化学構造の決定を試みている。 ②生体膜脂質を認識する化合物の探索研究:独自に構築した探索系を用いて、微生物培養液抽出物からユニークな表現型を提示する脂質認識化合物を複数種、取得した。現在、それらの化学構造の解明を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は目的とする生物活性を発揮する化合物の取得を目標としてきたが、2種類の生物活性を指標として、複数の化合物を取得することに成功し、化学構造も明らかになりつつある。また、それらの生物活性の選択性は非常に高く、今後の作用機序解析により代謝や細胞形態に関する新しい知見が得られることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度はおおむね順調に進展しており、今後は、そこで得られた化合物の構造解析と構造活性相関研究にはじまり、それらの生物活性の発現機序の解析を進める予定である。しかし代謝に関しては予想したよりも目的の生物活性を示す化合物種が得られていない。これは本研究で構築したスクリーニング系が非常に選択性の高い化合物を見極めるシステムになっている可能性を示唆しており、今後も天然からの化合物探索を精力的に進めるつもりである。
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