研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102517
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松森 信明 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50314357)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脂質ラフト / ケミカルバイオロジー / 生体膜 / 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
近年脂質ラフトが注目を集めている。この脂質ラフトにはシグナル伝達に関与する膜タンパク質が集積するとされているが、実際にどのタンパク質がラフトに集積しているのかについての情報は多くなく、さらには脂質分子と膜タンパク質間の相互作用についは不明な点が多い。そこで本研究では、ビーズ上に脂質ラフトなどの脂質膜表面を再現し、脂質膜に結合する膜表在性タンパク質を網羅的にプロテオーム解析することを目的とする。これにより、種々の脂質を用いて脂質膜特異的な膜表在性タンパク質の解析を行い、脂質と膜タンパク質間のクロストークを明らかにする。 24年度は、ラフト構成脂質であるスフィンゴミエリンと、通常のリン脂質について、アルキル鎖末端をアミノ化した誘導体を調製した。これらを、磁気ビーズ上にアミド結合を介して固定化し、極めて高い固定化率を達成した。次に、これらのビーズに対して、マウス脳可溶化液を混合し、脂質に特異的に結合するタンパク質を回収した。その結果、スフィンゴミエリンに特異的に結合した2種類のタンパクを回収し、質量分析によってそれらを同定した。さらに、これらのタンパク質について、スフィンゴミエリンとの結合性を確認する実験を行い、そのうち1種類についてはスフィンゴミエリン特異性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の24年度研究計画では、スフィンゴミエリン特異的な膜タンパク質の回収までを行う予定であった。しかし、予想以上に研究が順調に進行し、膜タンパク質の同定、さらには脂質との相互作用解析までを行うことができた。また、得られたタンパク質については(具体名は控えます)、これまで脂質ラフトとの相互作用は報告されていないが、機能的に興味深いタンパク質である。これが実際に脂質ラフトを認識すると、脂質ラフトの生理的役割に新たな機能を付与できると期待され、今後の解析に興味が持たれる。 以上、研究の進捗、並びに得られた結果ともに当初の予想を上回るものであった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、これまで順調に研究が進行していることから、従来の方策で今後も研究を展開する。具体的には、上述の今回得られたタンパク質に蛍光標識を導入し、このタンパク質がラフトに集積する様子を顕微鏡などで観察し、さらに機能面での解析も行う。 また、マウス脳以外のタンパク質ソースを用いてさらなるスフィンゴミエリン特異的タンパク質の探索を継続する。 また、スフィンゴミエリン以外の脂質、例えばスフィンゴ糖脂質やコレステロールなどもビーズに固定化し、それらに特異的なタンパク質の取得も目指す。 生体膜は生命現象の根幹をなす極めて重要な部分であるが、「なぜ生物は多様な脂質を持つのか」、「それぞれの脂質分子はどのような機能を持っているのか」といった簡単な疑問にも答えることができない。今後の研究により脂質とタンパク質間の特異的相互作用を明らかにし、生体膜が関与する生命現象の解明へとつなげていきたい。
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