公募研究
本研究では、がん細胞の分化を誘導するジテルペン系フシコクシン(FC)誘導体ISIR-042に着目し、FC依存的な14-3-3たんぱく質間相互作用(PPIs)の細胞内リン酸化リガンドを同定することを目標とする。本年度は、FCを出発原料とする有機多段階合成を集中的に行い、ジアジリン含有ISIR-042プローブの合成を達成した。一方、ISIR-042の合成スキームの改良を検討し、塩化アルコールを溶媒とするグルコース環変換反応を採用することで、爆発性試薬の大量使用を回避したスキームを確立した。リン酸化ペプチド存在下で組換14-3-3たんぱく質をジアジリンプローブで処理し、366nmの紫外光を5分間照射した後SDS-PAGEで展開し、14-3-3抗体によるWestern blotで解析した。その結果、27kDaの14-3-3単量体のバンドの他に、54kDa付近に14-3-32量体と考えられるバンドが検出され、14-3-3に標識されたジアジリン基が光反応によりもう一方のたんぱくドメインを捕捉したことが明らかになった。次に、本化合物による細胞内標的たんぱく質の捕捉を検討した。U937細胞をジアジリンプローブで処理し、洗浄後光照射した後、細胞ライセートをWestern blotで解析したが、光照射前後で有意な差は見られなかった。光照射による細胞毒性が見られたので、ライセートを用いた実験を検討したが、対照実験との有意差は見られず標的たんぱく質の同定には至らなかった。この原因として、標的たんぱく質の量が微量であり、多段階反応を経た捕捉が難しいことが考えられる。これらの知見を踏まえて次年度は、より直接的なアプローチとして、ISIR-042存在下での14-3-3抗体による免疫沈降法を採用する。
2: おおむね順調に進展している
細胞内標的たんぱく質の同定には至らなかったものの、ジアジリン基を導入した新規光親和性14-3-3プローブを設計・合成し、基礎的データの取得を達成できた。また、ISIR-042の合成スキームを検討し、次年度に予定している生物実験に必要なISIR-042を調製できた。
光照射による標的たんぱく質の同定に至らなかった原因として、標的たんぱく質の量が微量であり、多段階反応を経た捕捉が難しいことが考えられる。これらの知見を踏まえて次年度は、より直接的なアプローチとして、ISIR-042存在下での14-3-3抗体による免疫沈降法を採用する。また、ISIR-042と対照化合物の、白血病細胞HL-60に対する生物活性を評価する。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件) 備考 (1件)
Angew. Chem. Int. Ed.
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10.1002/anie.201106995
Anticancer Agents Med. Chem.
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http://www.scl.kyoto-u.ac.jp/~johkanda/index.html