研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102524
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
高橋 栄夫 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (60265717)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | NMR / 蛋白質-リガンド相互作用解析 |
研究実績の概要 |
研究代表者が開発した新規エピトープマッピング実験の高度化と汎用化をめざし、今年度は、(1)シミュレーションによる適応条件検討、(2)エピトープマッピング法の高度化、(3)疾患・創薬標的タンパク質への適用を目指した発現系構築、に取り組んだ。 (1)については、すでに作成している交差飽和実験のシミュレーションプログラムを基に、本エピトープマッピング実験に対応するよう改変を行った。モデル系を用いた簡易シミュレーションを行ったところ、複合体分子量が10万を超える相互作用系においても、本エピトープマッピング実験は適用可能なことが示された。(2)については、リガンドのエピトープ情報に加え、標的タンパク質側からの構造情報も得る目的で、部位特異的なエピトープマッピング実験を計画した。そのために必要となる標的タンパク質(p38α MAPK)の効率的な重水素化のための条件検討を終え、これまでに3種類のアミノ酸特異的標識を行ったタンパク質試料調製を完了した。現在、エピトープマッピング実験を実施している。(3)については、中枢神経系抑制性シナプス受容体であるGABAA受容体細胞外ドメインの発現系の構築を行った。そのαサブユニットについては、大腸菌発現系で十分な発現が見られ、変性・巻戻し実験を経て、可溶性試料の調製が可能となった。STD実験により、GABAA受容体のアロステリックリガンドであるベンゾジアゼピン系化合物の結合が示唆される結果が得られたが、その一方で、試料が凝集傾向にあるという問題も生じてきた。そこで、他の創薬標的タンパク質-リガンド複合体候補として、興奮性シナプス受容体であるAMPA型グルタミン酸受容体リガンド結合ドメインの発現系の構築も行い、活性を有する試料調製法が確立できたため、今後、本相互作用系も併せて相互作用解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エピトープマッピング実験の高度化(部位特異的エピトープマッピング実験)においては、試料調製(重水素標識タンパク質試料調製)の条件検討に時間を要したが、現在までに、アミノ酸選択的標識試料も複数得られてきており、次年度に結果が得られることが期待できる。疾患関連標的タンパク質への応用として選択したGABA受容体は、これまで構造解析が行われた例がない難易度の高い解析対象であるが、リガンド結合活性のある細胞外ドメインが取得できた。しかし凝集性の問題もあることから、さらなる試料調製法の検討が必要とされる。
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今後の研究の推進方策 |
実験計画としては、概ね順調に進展しているといえるが、シミュレーション結果では、実際のエピトープマッピング実験では見られていない非線形な緩和プロファイルが早い段階で現れてくるため、今後さらなる検討が必要となる。また、エピトープマッピング実験の高度化において、得られた実験結果の選択性が乏しい場合、複数ステップによる発現菌体の重水培地への馴化など、バックグラウンドとなるタンパク質試料の重水素化率を上昇させる取り組みを行う。良好なアミノ酸選択的エピトープマッピング実験結果が得られた際には、それらの情報を統合して標的分子結合部位におけるリガンド配向の決定を試みる。疾患・創薬標的タンパク質への適用については、発現を試みたGABAA受容体αサブユニット細胞外ドメインにリガンド結合活性はみられたが、凝集傾向にあることが判明したため、これを解決する試みに加え、念のため他の創薬標的リガンド相互作用系による解析も視野に入れた発現系構築(グルタミン酸受容体リガンド結合ドメイン)も進めている。
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