研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102528
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
戸嶋 一敦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60217502)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生体機能分子 / タンパク / DNA / 光分解 / セロトニン / PQQ / 光感受性分子 / 天然物 |
研究実績の概要 |
「生体機能光制御分子の創製とケミカルバイオロジーへの応用」と題した本研究課題の初年度として、タンパクを光分解する新たな小分子化合物の探索を行った。すなわち、本研究では、新たな光感受性分子の候補として、無毒な天然小分子であり、神経伝達物質でもあるセロトニンに着目した。近年、セロトニンが、中波長紫外光(UV-B, 300 nm)の照射下、DNAを光切断することが報告されたが、セロトニンがDNAのみならず、タンパクをも光分解するのではないかとの仮説を立て、セロトニンのタンパクに対する光分解活性と構造活性相関に関する研究を行った。その結果、セロトニンが、306 nmの中波長紫外光の照射下において、牛血清アルブミン(BSA)および鶏卵リゾチーム(Lyso)を光分解することを初めて見出した。さらに、セロトニンのタンパク光分解における構造活性相関を検討した結果、セロトニンの5-ヒドロキシインドール骨格に含まれる水酸基およびアミノ基を保護した誘導体のBSAに対する光分解活性が、セロトニンに比べて顕著に低下したのに対し、1級アミノ基のみを保護した誘導体のBSAに対する光分解活性が、セロトニンと同程度であることを見出した。また、新たな天然型の光感受性分子の候補分子として、天然に広く存在し、ビタミン様物質としても注目されているピロロキノリンキノン(PQQ)に着目した。その結果、PQQは、365 nmの長波長紫外光の照射下、DNAを効果的に分解することを初めて見出した。さらに、PQQの光分解活性のpH依存性は小さく、pH 5.5から8.5までの広範囲において、同程度の活性を発現することを見出した。また、PQQの構造活性相関を検討した結果、PQQのDNAに対する光分解活性の発現には、o-キノン構造が重要であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、「生体機能光制御分子の創製とケミカルバイオロジーへの応用」を目的としているが、本年度(初年度)において、本研究の基礎となる、天然物である小分子化合物が、新たなタンパク及びDNAを光分解する生体機能分子であることを発見し、今後の新しい生体機能光制御分子の創製とケミカルバイオロジーへの応用が可能であることを示せたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策として、引き続き、生体高分子であるDNA、タンパク及び糖を選択的に光分解する生体機能分子の設計、合成及び機能評価を行うことに加え、標的同定法としての応用展開を行うことで、ケミカルバイオロジーの新手法における新たなツールとしての有用性を示す。尚、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での大きな問題点は現時点ではない。
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