前年度に引き続き多感式化合物類縁体の合成を行った。 このうち、ベンゾピレノマイシン類の合成においては、これまでスケールアップの際に再現性に問題があったため、これを量産可能な合成経路への改良を行った。その結果、出発原料をメトキシテトラロンから1,5-ジヒドロキシナフタレンに変えることにより大幅に原料コストを削減するとともに、アントロン骨格構築後に連続Diels-Alder反応‐retro-Diels-Alder反応をもちいて芳香環を構築することにより、ベンゾアントロン骨格を再現性良くマルチグラムスケールで合成できるようになった。この改良版合成経路により、複数のベンゾピレノマイシン類縁体を合成した。以上のように、ベンゾピレノマイシンの構造活性相関研究および化学生物学研究が実施可能な合成経路を確立した。 また、ヒバリマイシノン類の合成においては、すでに確立している経路で問題となっていたAB(HG)環部の合成法の改良を行った。3級水酸基の導入をステップワイズに行うことと、位置選択的脱TBS化の条件検討を行うことで、収率および再現性良くAB(HG)環部を合成できるようになった。 一方、エストラジオール誘導体の合成研究においては、アリル基を有するエストラジオール修飾体と末端二重結合を有する緑色色素および赤色色素をそれぞれ合成した。次いでエストラジオール修飾体と緑色色素をにGrubbs触媒を用いてカップリングした。これにより色素が付いたエストラジオール誘導体を合成した。また、エナンチオディファレンシャル法を用いるためのエストラジオール鏡像体(ent-エストラジオール)を合成した。A環部をすべて13Cで標識したエストラジオールについても合成を進めており、これを合成するためのスキームを12C体で完成した。
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