研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
24102535
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中川 優 独立行政法人理化学研究所, 伊藤細胞制御化学研究室, 専任研究員 (90452284)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機化学 / 抗生物質 / 生理活性 / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
Pradimicin (PRM) は,D-マンノース (Man) を認識する唯一の天然低分子化合物群である.近年,PRM がヒト免疫不全ウイルス (HIV) 表面に存在する高マンノース型糖鎖に結合して,前例のない抗 HIV 作用を示すことが見いだされた.しかしながら,PRM の標的となる糖鎖構造の詳細は未だに不明である.本研究では,高マンノース型糖鎖ライブラリーを有機合成化学的に構築し,PRM の標的糖鎖構造を同定するとともにその結合様式を明らかにすることを目的としている. 本年度は,二次元固体 NMR 法である Dipolar Assisted Rotational Resonance (DARR) を用いて PRM と Man との結合様式を解析し,PRM と Man の結合モデルを提示するとともに,本結合モデルの妥当性を各種 Man アナログを用いた結合試験により確認した.さらに,本結合モデルに基づいて,6 位置換 Man 残基が糖鎖との結合における PRM-A の新たな標的となることを見いだした. 一方で,高マンノース型糖鎖ライブラリーの一部として 3 種のマンノトリオースの合成を行ない,PRM に対する結合能を評価した.その結果,PRM が単糖の Man に比べて枝分かれ型マンノトリオースに 50 ~ 100 倍程度強く結合することが明らかになった. これらの知見は,PRM の標的糖鎖構造と抗 HIV 作用のメカニズムを正確に把握する上で重要な基盤となるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,高マンノース型糖鎖ライブラリーの構築と PRM の標的糖鎖構造の同定を行なう計画であった.現時点では,高マンノース型糖鎖ライブラリーに必要な糖鎖をすべて合成するには至っていないものの,糖鎖との結合における PRM の新たな標的 Man 残基を見いだすとともに,PRM が枝分かれ型糖鎖構造に強く結合することを明らかにすることができた.一方で,PRM と Man の結合モデルを提示し,来年度に予定している PRM と糖鎖との結合様式の解析を行なう上で重要な基盤を築くことができた.以上の点から,本研究は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,高マンノース型糖鎖ライブラリーに必要な糖鎖をすべて合成し,PRM が標的としている高マンノース型糖鎖構造を完全に同定する.さらに,今年度に提示した PRM と Man の結合モデルに基づき,PRM と標的糖鎖構造との結合様式を解明するとともに,その知見を基に,糖鎖結合性人工分子の設計開発を行ない,新規抗 HIV 薬リードと糖鎖機能解析ツール分子の創製を目指す.
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