研究実績の概要 |
2次元電気泳動をベースとしたプロテオーム解析手法である2D-DIGEを用いた薬剤の標的分子同定を目的としたプロファイリング法(ChemProteoBase)を用いて、理研化合物バンク(NPDepo)の作用未知化合物であるNPD6689, NPD8617, NPD8969を解析した。標準化合物42化合物と比較したところ、ノコダゾールやビンブラスチンなどのチューブリン作用薬やトポイソメラーゼのカタリティック阻害剤であるBNS-22やICRF-193と同じクラスターに分類された。また、これら化合物は、形態を用いたプロファイリング法であるモルフォローム解析でもチューブリン阻害剤に最も類似した作用があることが示された。これらの推測結果をもとに、チューブリンの重合に及ぼす作用をタンパク質レベルで検討したところ、チューブリンの重合を阻害した。細胞レベルでも細胞周期をG2/M期で停止させること、紡錘体形成やチューブリンのネットワークに作用することから、NPD6689, NPD8617, NPD8969の標的はチューブリンであることが示され、本解析を用いた推測が有効であることが示された。 新規化合物Protuboxepin Aについても解析を行った。Protuboxepin Aは染色体のミスアライメントを誘導し、分裂中期で細胞周期を停止させる化合物としてとられたが、解析の結果、チューブリン阻害剤などの同様な作用をもつ化合物とは異なったクラスターに分類され、新規作用を示唆する結果が得られた。 既知化合物のデータを取得しデータベースの拡張とともに、新規データベース作成のために化合物に特徴的なスポットのデータ取得と同定を行った。得られたデータから化合物の標的同定につながるマイニングツールの作成を行った。また、2次元電気泳動技術を含め、本解析系を用いた共同研究にも着手した。
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