公募研究
本研究では感染性C型肝炎ウイルス(HCV)粒子産生系を用いて、天然化合物ライブラリーより新規生理活性を有する化合物を同定する。169種類の真菌二次代謝産物由来の天然有機化合物ライブラリーより、19種類の化合物が感染性HCV粒子産生を阻害することを明らかとした。またこのうち活性が高く、ある程度の化合物量が供給可能な3化合物SF30, SF186, SF253に着目して解析をおこなった。これら3化合物はそれぞれ細胞毒性を発揮することなく、用量依存的に感染性HCV産生を低下させることが判明した。感染性HCV粒子の産生に至るまでの過程のうち、HCVの標的細胞への吸着・侵入を前期過程、翻訳・RNA複製を中期過程、粒子形成・放出を後期過程とし、HCVシュード粒子系で前期過程のみを、HCVレプリコン系で中期過程のみを評価した。その結果、SF186は前期過程、SF30は中期過程、SF253は後期過程をそれぞれ阻害することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
一般的に抗ウイルス剤はその長期投与により薬剤耐性ウイルス出現を招くため、複数の治療薬を投与することが治療方針となり、標的分子や標的ステップの異なる抗ウイルス剤を開発することが薬剤開発方針となる。本研究より、標的ステップの異なる3つの抗HCV化合物を新たに同定した。これらは新たな抗HCV剤開発に有用なリード化合物になり得る。このように今回、天然化合物ライブラリーから複数の新規活性を有する化合物を同定した。本研究結果は平成25年度に国内および国際学会で発表予定であり、また得られた成果のうち一部を学術論文として投稿する準備をおこなっている。このように本研究は当初の予定通りに順調に研究が進行している。
今後それぞれの化合物がどのように各標的ステップを阻害するのかをさらに解析する。また化合物の標的タンパク質をファージディスプレイ法などによりスクリーニングする。一方新規抗HCV剤開発につなげるために、各化合物に関して、異なる遺伝子型HCVへの効果、インターフェロンやプロテアーゼ阻害剤など既存の抗HCV剤との併用による効果、プロテアーゼ阻害剤耐性HCV株への抗HCV効果、長期処理における薬剤耐性株出現頻度、等に関して調べる。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 3件)
Biochim Biophys Acta
巻: 1820 ページ: 1886-1892
10.1016/j.bbagen.2012.08.017
J Clin Microbiol
巻: 50 ページ: 1943-1949
10.1128/JCM.00487-12