研究領域 | 量子サイバネティクス - 量子制御の融合的研究と量子計算への展開 |
研究課題/領域番号 |
24102702
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
舛本 泰章 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60111580)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ZnO / 電子スピン / トリオン / 時間分解カー回転 / コヒーレント初期化 |
研究実績の概要 |
<InP量子ドット中にドープされた電子のスピン緩和> 1個の電子をドープしたInP量子ドットでの時間分解カー回転により、電子スピンの才差運動を観測し、才差運動の開始の振幅と向き、円・楕円偏光パルスの楕円率や強度、バンド幅を変えて調べ、それぞれ2個のスピン状態の電子とトリオンの4準位を基底とした密度行列の時間変化を記述するマスター方程式に緩和項をいれたシミュレーション計算と比較検討して、電子スピンの初期化と緩和について研究した。強励起下ではトリオンの寿命をはるかに上回るスピン緩和時間が観測され、また、励起強度に依存して電子スピン才差運動の位相反転と緩和時間の変化が観測された。励起強度に依存した現象は緩和項に従来のスピン位相緩和やトリオンの自然放射だけを入れただけでは説明できず、位相反転は自己形成量子ドットが持つ成長面内の光学異方性により、緩和時間の変化は新たに輻射減衰の緩和項を導入することで説明された。この事は、電子スピンのコヒーレント緩和にはスピン緩和だけでなく電子-トリオン間の光学的コヒーレント緩和も鋭く働くことを示している。電子スピンの初期化の機構は、電子-トリオン遷移に共鳴したピコ秒パルス光による電子-トリオンコヒーレント重ね合わせの生成である。 <ZnO中にドープされた電子のスピンの長時間コヒーレンス> 半導体中の局在した電子スピンのコヒーレンス時間(T2)は核スピンとの超微細相互作用を通して働く核磁場の揺らぎに律速されるので、核スピンがゼロでない構成原子の少ないZnOは、長い電子スピンの横緩和時間が期待される。Gaを6×1017cm-3の濃度でドープしたZnO薄膜中の束縛励起子D0Xに共鳴励起下で電子スピンのスピンコヒーレンスを時間分解カー回転を用いて計測し、電子スピンの集合としてのコヒーレンス時間T2*=12nsと長いコヒーレンス時間を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
InP量子ドット中にドープされた電子のスピン緩和に新たな輻射減衰いの機構を見いだしこれを論文として発表した。また、ZnO中の電子スピンの長時間コヒーレンスを見いだしたので当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
集団としてのZnO中の電子スピンの長時間コヒーレンスの観測に成功したが、更に、単一のZnO中の電子スピンの長時間コヒーレンスの観測をめざす。
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