研究領域 | 量子サイバネティクス - 量子制御の融合的研究と量子計算への展開 |
研究課題/領域番号 |
24102703
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小寺 哲夫 東京工業大学, 量子ナノエレクトロニクス研究センター, 助教 (00466856)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 量子ドット / シリコン / 電子スピン / 量子ビット |
研究概要 |
本研究では、シリコン量子ドット中の電子スピンを量子ビットとして用いる量子情報素子に関連する物理の解明と要素技術の実現を行ってきた。将来的に量子情報処理と既存シリコンテクノロジーとの融合を目指す。本年度は、(1)安定動作する素子の設計・作製、(2)素子評価による物理解明、(3)微小磁石効果について研究する計画であったが、実際にそれらの研究項目の目的を達成することができた。 (1)安定動作する素子の設計・作製:安定的に動作し、制御性の高いシリコン量子ドットの設計及び作製を行った。既に、極微細シリコン量子ドットの作製に成功していたが、本研究ではさらに高解像度電子線リソグラフィと熱酸化条件を最適化させることで、安定的に動作する素子を作製できた。具体的には、単一量子ドット、二重量子ドットにSET電荷検出計を取り付けた構造を作製し、その電気特性を評価した。 (2)素子評価による物理解明:量子ドットの磁場依存性を測定することにより、シリコン量子ドットに特有な電子状態を明らかにした。特にバレーの縮退がどの程度解けているのかを明らかにした。また、二重量子ドット素子において、トンネル結合を制御し、スピンブロッケード現象の観測を行った。 (3)微小磁石効果:微小磁石を用いた傾斜磁場法によりスピン操作を行う必要がある。実際に微小磁石を取り付けたシリコン量子ドットの作製を行うと同時に、シミュレーションによる磁場の評価も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)安定動作する素子の設計・作製、(2)素子評価による物理解明、(3)微小磁石効果について研究する計画であったが、実際にそれらの研究項目の目的を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 少数電子二重量子ドット素子作製・評価:初年度の素子をさらに改良し少数電子シリコン二重量子ドットの作製を行う。単電子状態の読み出しはソースドレイン電流もしくは、近傍に配置したSET電荷検出計によって行う。 (2) 物理解明<スピン緩和時間、交換結合変調>:少数電子量子ドットにおけるバレー分離の定量的な評価を行う。磁場下での測定を行うことにより、スピン、軌道、バレーの状態を同定し、その磁場依存性を詳しく調べる。 (3) 微小磁石効果<量子ドット>:微小磁石により傾斜磁場が生成できていることを、二重量子ドットの電気伝導特性評価から確認する。研究が前倒しで進んだ場合には、傾斜磁場下で電子の位置を高周波電圧により振動させることで、実効的に回転磁場を生み出す方式を用い、各量子ドット内の電子スピンの回転操作を行う。
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