公募研究
ダイヤモンド中の単一NV中心は優れたスピン特性及び光学特性を有し、近年注目されている。我々はこの優れた系を発展させるため、固体での特徴である半導体特性を生かし、スピンの電気的制御に関する研究を行っている。平成24年度はNV中心が1価の負に帯電した状態(NV-)の電荷状態の制御に成功した。これまでアンサンブルでの成功例は報告されていたが、単一のNV中心での成功は初めての例である。現在論文投稿準備中である。具体的には我々は単一NV中心からのみの発光を検出するための高品質層(i層)をボロンドープp型層とリンドープn型層で挟んだ試料を作製した。これまでアンサンブルでNV-の電荷状態の制御に成功した例では不安定な表面伝導層を利用したものであったが、これに比べ我々の試料では高電界印可でも安定である。昨年ハーバード大らのグループから電荷状態の変化を速くすることにより核スピンのコヒーレンス時間の長時間化に成功した報告がなされた (Science, 336, 1283 (2012))。これはレーザー励起によるイオン化を利用したものであり、高いパワーの光励起による温度上昇がコヒーレンス時間の長時間化の限界を与えていた。この観点からは電気的な制御を高速に効率よくできることが技術面からは重要で、その機構の理解は学術的に重要である。我々は平成24年度に時間分解の測定を導入し、NV-から中性状態のNV中心(NV0)へ変化のダイナミクスを世界で初めて明らかにした。電流注入による電荷の変化は核スピンのコヒーレンス時間の長時間化の研究で見積もられた変化速度と同レベルの値が実現していることを示すことができた。またNV-とNV0間の電気制御では速度が著しく違うことを明らかにした。これは機構解明という点で重要である。また、計画通り、電気検出磁気共鳴(EDMR)装置の立ち上げも行えた。
2: おおむね順調に進展している
本研究の主眼である電気的操作に関連し、NV中心が1価の負に帯電した状態(NV-)の電荷状態の制御に成功した。今後のスピンの制御等に結びつく大きな一歩であると考えている。また、計画通り、電気検出磁気共鳴(EDMR)装置の立ち上げも行え、スピン状態の検出に向けた研究も順調に進んでいる。
平成24年度はおおむね順調に計画を進めることができており、平成25年度も計画通りに進めたいと考えている。特に、スピン状態の電気的検出に関しては装置が立ち上がってきているため、平成25年度も測定を進め研究を推進していきたい。電気的なスピンの制御に関しても実験的な準備ができてきており、研究を推進していきたい。
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Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 51 ページ: 090106
http://dx.doi.org/10.1143/JJAP.51.090106
ニューダイヤモンドフォーラム会誌
巻: 28(4) ページ: 17-19