昨年度終了時の計画に沿い、データ取得の都合や科学的重要度を鑑みて、電波干渉計の高分解能を利用した観測研究を優先的に推進した。物質散逸の進んだ円盤の様子や、巨大惑星形成を示唆する非対称質量分布の円盤等を観測的に見出し、関連論文出版を行ってきた。 これまでの分子輝線観測結果を元に、特徴的な進化段階を示していた2天体に対し、電波および赤外線による高分解能観測を行い、その解析を進めた。そのうち1天体(Sz91)では、非常に大きな穴構造(半径~70AU)を持つ原始惑星系円盤の様子を、両波長データから明らかにする事が出来た。このような円盤穴構造は、原始惑星の存在を間接的に示唆するものであり、円盤質量も小さいことから、円盤散逸が進み惑星系へと進んでいる円盤であると考えられる。Sz91に関しては、大型干渉計ALMAでの観測が実行予定であったが、装置トラブルにより当該年度中の観測は不可能となった。 一方、比較的重い星(HD142527)の星周円盤に対するALMAを用いた観測に成功しており、極めて鮮明な画像を取得すると共に、その特異な円盤構造を明らかにした。円盤の電波強度分布は強い非対称性をもっており、これは円盤質量分布の大きい偏りを示唆する結果である。物質が溜まっている側では、自己重力によって収縮が始まる可能性もあり、これは最終的に巨大惑星を形成する可能性がある事が明らかになった。 多分子輝線サーベイ観測については、これまでASTE望遠鏡で取得したデータの解析を進め、円盤進化に伴う分子量変化の傾向の調査を進めた。調査の結果、円盤からの分子輝線強度は円盤構造の指標となるSEDとの相関がある事が分かった。この傾向は理論計算でも予想されており、円盤ダストが中心面に沈殿することによる分子量変化に依るものだと考えられる。
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