研究概要 |
本研究の目的は、近い将来に原始惑星系円盤の内縁部が観測可能となることを念頭に、その降着機構としてもっとも有力視されている磁気回転不安定性(MRI)の大局的な飽和状態をシミュレーションで実現し、惑星形成過程との相互作用を解明することであった。そのような大規模計算、かつ様々な素過程を考慮した物理モデルの検討を行うため、とくに、GPUとSSDを組み合わせた計算機によりパソコン単位でそのような規模の計算を実現することをめざしていた。 そこで、東京工業大学のGPUスパコンTSUBAMEなどを利用して、GPGPUを利用したMHDシミュレーションコードの開発を進めていた。また研究室にてSSDへのアクセスを高速化するべく、SSDを多数装備し並列にアクセスできるようにしたパソコンを自作し、ディスクアクセス性能を測定したり、配列アクセスを扱えるようなライブラリを作成したりしていた。 ところが、GPU上でのMHDシミュレーションコードの開発が思ったように進まず、当初想定のような大規模計算は実現の見込みが立たなくなった。 そこで当初より注目していた素過程の一つであり、原始惑星系円盤におけるMRIの大局的な飽和状態を司る重要な素過程である円盤雷に焦点を絞った。原始惑星系円盤においては雷を引き起こしうる複数のモデルが提案されており、そのいずれが正しいかを観測的に区別することは原始惑星系円盤を物理的に理解するうえで極めて重要である。結果として、HCO+, DCO+, N2H+という三種類のイオン種について、雷モデルを考慮に入れた円盤モデルを構築し、輻射輸送計算を行い、それをもとにアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)で雷モデルを検証可能な分光観測および分光画像観測を提案した。 また、原始惑星系円盤での雷現象について総合的に論じ博士論文を著した。
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