研究領域 | 太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ |
研究課題/領域番号 |
24103508
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
西山 正吾 国立天文台, 太陽系外惑星探査プロジェクト室, 研究員 (20377948)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 光ファイバー / 分光 |
研究実績の概要 |
第2の地球を探す。地球と同じような大きさの、そして水が液体として存在し、生命が生まれうる環境にある惑星を探す。これがこのプロジェクトの最終目標である。太陽よりも軽い恒星であるM型主系列星の視線方向の運動を観測し、惑星が存在するかどうかを確認する。M型主系列星の場合、太陽よりも暗いので、数週間で公転するくらいの距離に、液体の水が存在する惑星があると期待できる。つまり短期間の観測で、水が存在する惑星の有無を確かめることができる。 上記の目的のために私たちは、近赤外線高分散分光器を開発している。この装置の中で、特に重要な要素が光ファイバーである。最適な光ファイバーを探し、その性能を評価するために、実験環境の整備(1年目)と測定(2年目)を行う。 本年度は実験装置の整備にあたっており、具体的に形となってあらわれた成果はまだ多くはない。しかしすでに実験環境の整備は終わり、測定を始められる段階に到達している。装置に適したファイバーの性能を検討し、それに合致しそうなファイバーの選定も行った。いくつかのファイバーについても試験的な測定を始めている。当初の計画通りに研究は進んでおり、残りの1年でじっくりとファイバーの性能評価を行う予定である。計画全体の進捗状況や実験環境の整備については、日本天文学会やthe international society for optics and photonics (SPIE) 等で発表を行った。 また開発中の装置の応用例として、銀河系の中心領域の観測を検討している。可視光では観測できないこの領域に対して、近赤外線分光器の応用範囲はとても広い。サイエンスの検討および観測天体の探査の過程で、いくつかの査読論文を発表し、多くの招待講演も受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の目標は、光ファイバーの測定実験の環境を整えること、そして実験に必要な光ファイバーの選定、購入を進めることにあった。現時点ですでに環境は整い、必要なファイバーもほぼ全て手元に揃っている。つまり本計画は、ほぼ予定通りに進んでいると言える。 実験には、大きく分けて以下の5つの装置が必要である。赤外線光源、ファイバーへの入射光をつくる光学系、光ファイバー、出射光をつくるための光学系(拡大顕微鏡)、赤外線カメラ。それぞれのパーツに必要な性能を評価し、購入を進め、実験装置の組み上げが終了した。ファイバー出射光の近視野像、遠視野像それぞれも測定できるよう、2つの種類の、出射光をつくるための光学系も製作した。 光ファイバーには多くの種類がある。現段階では、マルチモードファイバーを使うことを想定している。その中にも、ステップインデックス型とグレーデッドインデックス型の2種類のファイバーがある。ステップインデックスはファイバーコアの屈折率が一定のもの、グレーデッドインデックスはコアの屈折率をなめらかに変化させたものである。現段階では、どちらのファイバーが分光器に適しているのか分からないので、どちらの型に対してもいくつかの種類のファイバーを購入した。 またコア経や形状についても比較できるように、数種類のファイバーを購入した。コア系は50ミクロンから100ミクロン程度が適しているのではないかと考え、この範囲で数種類のファイバーを購入した。またスクランブル効果が効果的に効くという情報を受けて、多角形のファイバーの購入も検討中である。 このように、実験に必要な装置、部品はそろった。実際に組み上げ、測定ができる状態であることも確認済みである。これから1年間、ファイバーの特性を理解するための実験に集中することができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、様々な光ファイバーの特性の測定を進めていく。2013年4月の段階ですでに、分光器に適していそうな数種類の光ファイバーを、様々な長さで購入している。これらを用いて実験を行う。 まず大事なのは、各光ファイバーが、近赤外線に対してどのような減衰を示すのかを理解することである。望遠鏡の集光部から装置まで、数10m-100程度離れる可能性がある。その間に、大きな減衰が生じるようなファイバーは使えない。同じ種類のファイバーについて、様々な長さで減衰の様子を測定すれば、そのファイバーに対する減衰曲線を描くことができる。この測定をもとに、各ファイバーの減衰特性を理解する。 次に重要なのはどのようなファイバーにおいてスクランブル効果が有効かを見極めることである。ファイバーを使うひとつの利点は、スクランブル効果により、位置的に偏った入射光が、出射時に空間的にならされる点にある。この効果を活かせば、分光器のスリット上の同じ位置に常に星の光を導くことができる。すでに出射光の広がりを測定する実験装置も組み上げられている。これを用いて、どのような種類の、どのような形状の光ファイバーにおいてスクランブル効果が最も有効なのかを理解する。
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