研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の創成と診断・治療支援の高度化 |
研究課題/領域番号 |
24103701
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福田 寛 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (30125645)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 正常脳構造モデル / MRI / ユークリッド距離 / コサイン類似度 / 疾患脳自動診断システム / 計算脳科学 |
研究実績の概要 |
70歳以上の高齢者196名の脳MRI画像から、認知機能(MMSE)23点以上、うつ病スコア15点未満かつ中等度以上の脳白質病変を有する者を除外し、最終的に高齢者健常脳MRIとして100例を選択した。100例の中の一例を見本脳で、他の99例の脳形態を変形して見本脳にあわせるための画素ごとの線形・非線形のパラメータ(変形マトリックス)を計算した。得られた100個の変形マトリックスを平均した“平均マトリックス”を求め、これを見本脳に適用することにより、70歳代の平均脳(=正常脳構造モデル)を作成した。 本研究の目的は得られた正常脳構造モデルと疾患脳群との有意差を統計的検定する方法を開発することである。得られた平均変形ベクトルは画素ごとにx,y,z成分ごとの平均値と分散を有している。その分散を表現する方法としてユークリッド距離とコサイン類似度を採用した。 1) ユークリッド距離:画素ごとの平均ベクトル(Xm)の終点と100個の変形ベクトルの終点との距離の平均と分散を求め、一次元のスカラー量とした。 2) コサイン類似度:二つのベクトルXmとXiとのコサイン類似度は両者の内積Xm・Xi をそれぞれのベクトル長の積(|Xm||Xi|)で除したものであり、二つのベクトルが同じ方向を向いているかどうかの指標となる。 この方法の妥当性を検証するために、20歳代の健常脳MRIを用いて作成した正常脳構造モデルの画素ごとの分散をユークリッド距離とコサイン類似度を用いて画像表示した。その結果、後頭葉のユークリッド距離が大きく、コサイン類似度が小さいこと、すなわち後頭葉での分散が大きいことを示している。これは、後頭葉の個人差が大きいことを示しており、過去に別の方法で評価した方法と一致していた。以上により、健常高齢者モデルと加齢脳疾患との統計検定により、自動診断を行うシステム開発のめどがたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、計算解剖学的手法によって正常脳構造モデルを作成し、これと疾患脳を画素ごとに統検定を行うことにより、脳疾患の形態異常を自動診断するシステムを開発することである。その第一段階として、線形、非線形の変形パラメータを用いる解剖学的標準化の方法によって、多数の健常者の脳MRIから70歳代高齢者の平均脳形態(=正常脳構造モデル)を作成することに成功した。この脳の変形に用いた多数のマトリックスを平均した平均変形マトリックスは、各画素のx,y,z成分ごとの平均値と分散を有している。この分散を表現する方法として、ユークリッド距離とコサイン類似度を用いることを思いついた。実際に計算を行ってみると、脳の形態の分散を表現できることが示され、開発の第二段階がほぼ終了した。比較の対象となる疾患脳を変形するマトリックスが平均変形マトリックスの平均と分散の範囲を超えているかどいうかを検定すれば、自動診断システムが完成すると考えられ、H25年度に実施する。研究の進展は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度に作成した70歳代正常脳モデルと疾患脳との画素ごとの差異を統計検定することにより、疾患脳を自動診断するシステムの開発を行う。疾患脳として70歳代高齢者のうち認知機能低下者(MMSE23点未満)および経度うつ症状を有するうつ病スコアが15点以上の被験者の脳MRIを用いて、その脳形態の差を検出するアルゴリズムを開発する。
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