研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の創成と診断・治療支援の高度化 |
研究課題/領域番号 |
24103702
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
工藤 博幸 筑波大学, システム情報系, 教授 (60221933)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 医用画像 / CT / 計算解剖学 / 画像処理 / 画像再構成 / 逆問題 / 圧縮センシング / MAP推定 |
研究実績の概要 |
本研究では、計算解剖学で生成した人体や臓器のアトラスを事前情報としてイメージングにフィードバックして、被曝量低減・測定データ削減・画質向上などを実現して医用イメージングを高度化する新しい枠組みを構築することを目的としている。平成24年度の研究では、少数方向の投影データから高画質の画像を生成するスパースビューCTを典型的なプロトタイプの問題として、上述の枠組みに基づく以下の2つの画像再構成法を開発した。1つ目の手法は、確率アトラスMAP法と呼ばれる以下の手法である。まず、同じ部位を撮影した複数患者のCT画像から計算解剖学の手法で人体や臓器の標準アトラスを混合ラプラス分布の形で構築しておき、これをMAP推定に基づく画像再構成の事前情報に利用して少数方向投影データから高画質のCT画像を生成する手法である。本手法のソフトウェアを開発して、胸部CT撮影の実画像を用いたシミュレーション実験による性能評価を行った結果、少数方向投影データからの画像再構成に提案されている従来手法と比較して優れた性能を持つことが実証できた。2つ目の手法は、腹部MAP法と呼ばれる以下の手法である。一般に腹部のCT検査では時相が異なる4枚の画像が撮影され被曝量が多い問題点を解決するため、造影剤注入前の1枚の画像は十分な方向数の投影データで撮影を行い、造影剤注入後の3枚の画像は少数方向投影データで撮影を行い1時相目の画像をMAP推定に基づく画像再構成の事前情報に利用して高画質の画像を生成する。本手法のソフトウェアを開発して、数値ファントムと腹部CT撮影の実画像を用いたシミュレーション実験による性能評価を行った結果、造影剤注入後の撮影は方向数をかなり減らしても本手法を用いることで十分な画質を達成できることが実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画では、平成24年度は上記研究実績の中で1つ目の小テーマである「確率MAP法によるスパースビューCTの画像再構成」の研究のみを実施する予定であった。しかし、研究を進めて行く上で、2つ目の小テーマである「スパースビューCTと腹部MAP法を用いた腹部CTの被曝量低減」の研究の優れた着想を得たため、これに関しても多くの労力をかけて短期間で研究を実施した。即ち、当初の予定のほぼ2倍の研究を実施したことになり、計画以上の進展があったと考えている。また、研究成果の対外発表に関しても、平成24年度内に、6件の雑誌論文、2件の国際会議論文、6件の国内学会発表、3件の著書の実績が得られ、研究が当初の計画以上に進展していることを実証している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究は、ほぼ申請書に記載した通りに以下のように推進する予定である。具体的には、計算解剖学アトラスを用いたインテリアCTの研究を中心に実施する。インテリアCTとは、心臓や乳房など検査のROIのみにX線を照射する新方式のCTであり、厳密な画像再構成を行うには被写体に関する事前情報が必要なことが示されている。そこで、平成24年度に検討したスパースビューCTと同様な方法で構築した計算解剖学アトラスを用いて、インテリアCTの有効な画像再構成法を開発する。まず、平成25年度前半において、インテリアCTの画像再構成における解の一意性と安定性の理論的考察を行う。次に、平成25年度後半において、スパースビューCTの研究で構築した腹部CTの標準アトラスを用いて、シミュレーション実験と実データによる評価を行う。既に、手法構築の予備的な検討は少しづつ進めており、学術研究としての新規性を出す着想を考案済で、基礎的な部分に関する論文を発表し始めている状況である。実験に必要なCT装置の実データ取得についても共同研究を行っている企業や研究所に交渉を進めており、平成25年度中に入手して実験を実施できる見通しを得ている。
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