研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の創成と診断・治療支援の高度化 |
研究課題/領域番号 |
24103704
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中村 亮一 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30366356)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 手術分析・評価 / 手術ナビゲーション / 手術ワークフロー解析 / 内視鏡外科学 |
研究実績の概要 |
本研究では,計算解剖学的手法により求められた臓器モデルおよびその近接領域モデルのデータを用いた手術工程分析法を提案し,近接覚ナビゲーション誘導下での腹腔鏡下手術の作業工程推定,分析,評価を行う技術を開発する.その具体的技術として,今年度は①計算解剖学モデルを用いた誘導/回避・工程分析用臓器モデルの構築と計算解剖学モデルベースの近接覚ナビゲーションの実装,②計算解剖学モデルと術具ナビゲーションログ情報を用いた手術工程分析アルゴリズムの構築について研究を実施した.内視鏡下手術で最も一般的である胆嚢摘出術と,先年保険適応となった新しく難易度の高い術式である肝切除術を基本対象とし,ファントムと内視鏡トレーニングボックスを用いた模擬的手術環境を評価系として研究を実施した. ①:術野の3次元医用画像からナビゲーションによる術具の誘導/回避と手術作業工程分析に必要な臓器をモデル化するとともに,臓器外部の距離マージン領域を提示する拡張臓器モデルを定義し,誘導/回避対象周囲のマージンへの術具侵入時に警告を発することで,処置対象・治療パスへの誘導と血管等の損傷危険領域の回避を促す近接覚ナビゲーションシステムを実装しその効用を評価した.ファントムを用いた腹腔鏡下肝切除術での近接覚ナビゲーション併用・非併用条件でのパフォーマンスを定量的に評価する新しい評価関数を定義し,その評価値とファントム内血管モデルの傷害度に強い相関が見られたことから,誘導性能を示す評価値としての有用性が示唆された. ②:術具位置ログと工程分析用臓器モデルとの干渉を解析し,作業領域情報と術具情報から手術作業のステージを同定するアルゴリズムを構築し,術式分析評価を行った.ファントムを用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術25例のデータから,工程の自動分類と進捗度の客観評価が可能なことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算解剖学モデルとナビゲーション情報を用いることで,ナビゲーション機能の有効性,作業の評価等について定量性と客観性を持った分析が可能であることが示された.術者による実験も既に20例以上のデータを蓄積することができ,今後のさらに詳細な分析や新たなアルゴリズム構築にも応用可能と考えられる. しかし一方で,実験に用いた臓器ファントムと実際の臓器との違いがこの評価に大きな影響を与えている可能性は否定できない.また術中モデルのリアルタイム更新が不可能なため臓器を固定した剛体として実験を行っている.本研究によって構築する解剖モデルとナビゲーションによる手術・機器評価系の信頼性をより高めるためには,より臨床に近い環境での評価が重要である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は①より臨床に近い肝切除術・胆嚢摘出術用ファントムの構築,②アルゴリズムの改良・新開発,③リアルタイムモデル構築・評価の手法について検討する.特に中核である②については近接覚に重点を置き,解剖モデル周辺領域での作業についての評価アルゴリズムの検討を行い,手技の特長・誘導装置の効用についての新たな客観的評価法の研究を推進する.
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