研究領域 | 先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦 |
研究課題/領域番号 |
24104505
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
北澤 敬章 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (20271158)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | テラスケールの物理 / 弦模型 / LHC実験 |
研究実績の概要 |
平成24年度は、LHC実験におけるテラスケール弦模型の検証の研究を第1として、弦の張力のエネルギースケールとウィークスケールを結ひつける理論的な研究を第2とする、という計画であった。 第1の研究については予定通りに進捗し、テラスケール弦模型のLHC実験に対する予言を計算機によるモンテカルロシミュレーションを行うことによってLHC実験で直接に探索可能な弦の張力のエネルギースケールの上限を求めた。LHCにおける衝突エネルギーが12 TeVの場合を想定したシミュレーションを行ったので、実際の実験の進捗を待つという状況となっている。また、これに関連して、LHC実験のATLAS実験グループからの要請を受けて、テラスケール弦模型が実現している場合の信号事象の生成を計算機によるモンテカルロシミュレーションによって行い、ATLASグループの現在の実験的研究に対して重要な寄与をした(その研究は下記の雑誌論文の欄の3番目の論文により発表されている。研究代表者の名前はATLAS実験グループの内規の都合により著者の中にないが、謝辞の筆頭に書かれている)。 第2の課題については、具体的な弦模型において理論的な考察を行った。Z3オービフォールドの特異点上にD3ブレーンと anti-D7ブレーンを設定して超対称性を破った系において、D3ブレーン上に実現されるゲージ対称性が自発的に破れる状況を実現して弦の張力のエネルギースケールとゲージ対称性の破れのエネルギースケールの間の関係を考察した。非常に特別なことがなければ、後者は前者より1桁小さいという結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1の課題としていたLHC実験におけるテラスケール弦模型の検証の研究は当初の予定通りに進み、実際の実験の結果を待つという状況になった。また、第2の課題としていた、弦の張力のエネルギースケールとウィークスケールを結ひつける理論的な研究についても、簡単ではあるが具体的な弦模型において理論的な考察を行い一定の結論を得た。
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今後の研究の推進方策 |
LHC実験は重要な結果を残し、約2年間の休止状態に入った。これを受けて当初の予定にしたがい、平成24年度には第2の研究としていた、弦の張力のエネルギースケールとゲージ対称性の自発的破れのエネルギースケールを結ひつける理論的な研究を行う。平成24年度に研究対象とした弦模型には未定義の部分(コンパクト空間を特定しなかった)が残されていたが、今年度は完全に定義された模型を構成して研究を行う。具体的にはZ7オービフォールドというコンパクト空間に着目する。弦の張力のエネルギースケールとゲージ対称性の自発的破れのエネルギースケールの関係を明らかにするだけでなく、弦模型の初期宇宙の物理に対する予言についての研究も行う。
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