公募研究
1) 有機ブレンステッド酸触媒を用いた環状カーボネートのリビングカチオン開環重合生分解性と生体適合性を有するポリトリメチレンカーボネート (PTMC) は主に金属触媒を用いた重合により合成されているが、金属触媒のポリマー中への残留が問題になっている。そこで本研究では、ポリマー中からの分離が容易な有機ブレンステッド酸の一種であるリン酸ジフェニル (DPP) を触媒に用いたトリメチレンカーボネート (TMC) の重合を検討することで、新たなPTMCの精密重合系の構築を目指した。重合の生成物は PPA を開始末端に有するポリトリメチレンカーボネート (PTMC) であることが確認され、分子量分散度は 1.07 と狭い値を示した。また、モノマー消費は時間の経過に伴って増加し、重合はリビング的に進行していることが明らかとなった。以上の結果より、リン酸ジフェニルを触媒として用いたトリメチレンカーボネートの精密重合を達成した。2)有機超強塩基触媒を用いたエポキシ化合物のリビングアニオン開環重合有機分子触媒であるt-Bu-P4を触媒に用いたベンジルグリシジルエーテル (BGE) とエトキシエチルグリシジルエーテル (EEGE) の精密ブロック共重合を行うことで、選択的な脱保護反応および側鎖変換反応を行うことが出来る新規な機能性ブロックコポリマー (PBGE-b-EEGE) の精密合成を行った。いずれの重合系も高いモノマー転化率を示し、数平均分子量は理論分子量と良い一致を示した。また、分子量分散度は 1.16 以下と狭い値であった。以上の結果より、t-Bu-P4 を触媒として用いた PBGE-b-PEEGE の精密合成を達成した。PBGE-b-PEEGE は選択的な脱保護反応および側鎖変換反応が可能であり、新規な機能性ブロックコポリマーの合成中間体として有用である。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度は「有機超塩基触媒を用いた新規重合系の開発」という内容で種々のエポキシ化合物の精密重合を達成、また、「有機酸触媒を用いた新規重合系の開発」という内容で環状カーボネート類や環状エステルエーテルの精密重合を達成している。さらに、これらの成果をすでに論文報告している。これらの結果はほぼ計画通りの成果であり、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
今後の研究では、種々のアクリル樹脂の合成に有機分子触媒を利用し精密合成系を達成することと、平成24年度に得た成果を利用して高機能性かつ環境調和型の高分子材料の分子設計・精密合成を有機分子触媒を用いて行う。最終的には、高分子合成化学に対する有機分子触媒の最適化や適用可能なモノマー範囲の拡大を達成し、結果的に触媒化学や有機化学分野などを巻き込んだ新たな学術的研究の創造を行う。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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